食の今昔物語 12か月の裏表 9月編

     

もっと肉を食わせろ!

隠居中のご主人と健康相談員の会話です。

隠居中のご主人「嫁が、年寄りには肉よりも魚のほうがずっと健康的で長生きのためには良いのです、と言って大好きな肉料理を食べさせてくれません。高齢のタレントが週に2~3回ステーキを食べるのが健康の秘訣だと言っているといっても、お父さんはコレステロールが高いからダメ、と言って聞かないのですわ。たまには肉を食わせろとストライキをおこしたい気持ちですよ。あなたから何とか言ってもらえないですか。ネコでもあるまいし魚ばっかりじゃ飽きてしまって、飯の時間が楽しみでなくなってしまいそうだよ」

健康相談員「わかりました。若奥様に言っておきますね」

 高齢者には、肉より魚が健康に良いと思っているあなたの家族の会話かも知れません。 

 9月の第3月曜日は敬老の日で国民の祝日です。超高齢化社会を迎えている時、一人でも多くのお年寄りが、元気で長生きして欲しいと願うのは、社会共通の願いでもあります。ではお年寄りが元気でいるためにはどうあるべきか考えて見ませんか。

 健康維持の第一条件は、年齢に関係なくまず食生活を大切に、ということに異論はないと思います。食に限って言いますと、世間には、「高齢者には肉よりも魚のほうが健康に良い」と考えている方が多いようです。また最近では「粗食が健康の素」という説もあります。この根拠として考えられるのは、「歳を取ると運動量も基礎代謝も減ってくる。若い時と同じ食事量と内容だと摂取カロリーオーバーとなり、肥満や糖尿病といった生活習慣病の起因となる可能性が高くなる」という考えや「高齢になれば胃腸などの機能も衰えているので、肉よりも消化の良い魚のほうが合っている」という意見があるようです。従ってカロリーの高い肉よりも、低カロリーの魚のほうが高齢者には健康的という論法のようです。食事量が減るというのは自然なことと考えて間違いないでしょう。 

 ところが最近の「高齢者の食と健康状態について」のいくつかの発表された論文では、「高齢者にとっては、加齢による食欲の減退をはじめ、一人暮らしやお年寄りだけの核家族化に起因する食生活が、低栄養状態、分かりやすく言うと栄養失調状態を作り出している。この栄養状態が低いということは寿命を縮める要因の一つとなる」という主旨のものが注目を浴びております。

 高齢者の栄養状態が良好かどうかを知る指標として、体格指数(BMI),アルブミン値、総コレステロール値、ヘモグロビン値の四つを用いるのですが、それぞれエネルギーの摂取と消費のバランス、タンパク質摂取、脂質摂取、鉄分摂取と深い関連があります。高齢者が長寿であるためには、栄養状態を高めることが欠かせません。少なくとも毎日が粗食では、認知機能や体力維持は衰えていくのみであることを理解しておくべきかも知れません。もちろんバランスを配慮しながらですが。「もっと肉を食べたい!」というお年寄りの声にも、真剣に耳を傾ける姿勢が望まれるのではないでしょうか。時にはお医者さんや栄養士といった専門家に相談されると良いでしょう。

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