健康ニュース 3月15日号 高齢者と自動車事故

     

 最近、テレビや新聞などのメディア報道で目立つのは、痛ましい高齢者の自動車事故多発ということではないでしょうか。

認知症の疑いのある80歳を超えたお年寄りが児童を撥ねて死傷させた、高齢者の運転する車が高速を逆走して死傷事故を起こした、スーパーの屋上駐車場で高齢者が運転を誤り転落、など衝撃的な死亡事故が多発していることは事実として誰もが受け止めておく必要はあると思います。

しかしこれらのニュースとなった事故のみから、高齢者の自動車死傷事故が増加していると決めつけることに、異論の声はあまり聞かれません。

一方では、かなり前からこの種の事故が増え続けたということで、75歳以上のドイバーの運転免許書き換え時には、様々な適性試験を受けることが義務づけられた、ということを事実として受け止めておかなくてはならないでしょう。

「高齢者と交通事故死」について調べていく中で面白いことに気づきました。通常私たちが、交通事故死について語る時、根拠となるデータは警視庁発表のものが多いです。ほとんどのメディアも警視庁発表のもので発信しています。例えば、昨年度の交通事故死は4千人を下回った、と言うようなことを目にすることと思います。警視庁の発表する交通事故死は、日本国内で発生した事故であり、たとえ外国人が起こした事故でもカウントされています。意外と知られていないことは、交通事故死とは事故発生から24時間以内に亡くなった方を対象としているということでしょう。

我が国の交通事故死については、厚生労働省でも発表していることはあまり知られていないようです。警視庁発表のデータと最も違いのある点は、交通事故死とは、事故発生から12か月以内に亡くなった方を対象としていることかもしれません。加えてたとえ日本国内の事故死であっても、日本国籍を待たない外国人だと死亡事故数としてカウントされていないことです。これは人口動態という点から納得できます。

前置きが長くなりましたが、高齢者の運転事故死について調べた結果、分かったことを書いてみます。ここでは全て警視庁発表のデータを引用します。

高齢者の免許保有者数は、平成14年では826万人台ですが平成24年には1420万人台と1・7倍増となっております。一方で事故件数についてみますと1・2倍増でしかありません。

違うデータで見てみます。平成5年での65歳以上の免許保有者のうち1000人当たりでの死亡事故件数は約10人です。平成22年の同数値は約5人と半減しています。

さらに年代層別に見てみますと平成27年の、16歳~24歳の免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は7・61人ですが、65歳以上の同数値は5・80人です。

このデータから見えることは、高齢者の運転事故数が増えているということは、正しいとは言えないと考えますが、いかがでしょうか。痛ましい死亡事故報道のみで、印象付けるきらいは偏っていると思いませんか。この先、高齢者は自動ブレーキ装備搭載車しか運転できない、などと言う規制が強くなっていかなければ良いのですが・・・。衝撃的事故だけで全てを決めつけることだけは、避けてもらいたい、と思います。