食の今昔物語 4月編 コンビニ弁当に思う

     

 スーツ姿も初々しい新社会人が目につく時期です。頑張るぞ!という意気込みは頼もしく思います。親元を離れて自立した新社会人に頑張れ!と声をかけたくなります。

 そんな新社会人の親にとって心配なのは、自立した子供が、きちんと食事を摂り健康管理ができ、厳しい競争社会でやっていけるのかということで、これも親心でありましょう。そんな時、「コンビニの弁当ばかり食べていては体に良くないよ」という言葉をよく耳にしませんか。

 コンビニ弁当の欠点を話す人に聞いたところ、次の3点に絞られるようです。①防腐剤など食品添加物がたくさん使われている。②カロリーが高い③野菜が不足している。

 ①の食品添加物について調べました。食品添加物の用途別項目は、*甘味料、*着色料、*保存料、*増粘剤・安定剤・ゲル剤または糊料、*酸化防止剤、*発色剤、*漂白剤、*防かび(防ばい)剤の8項目に分類され、防腐剤という文字を見つけることが出来ません。つまり食品添加物には防腐剤というものはありません。昭和22年、食品衛生法が制定された以降は、防腐剤は使用されていません。コンビニ弁当などには、食品が腐りやすくなり、食中毒を起こすリスクを下げるために、保存料、日持ち向上剤が使われているのが通常です。

 保存料を心配する人もいますが、保存料は加工食品の保存性向上目的に使用し、微生物による腐敗・変敗を防ぐ役割や、微生物による食中毒を減らす役割で使用されているのです。もちろん安全性は科学的に裏付けされています。ほとんどの保存料は食卓で頻繁に口にする食品材料をもとにして作られているのです。

 一方では、保存料不使用という表示の弁当なども出始めていますが、その保存料不使用が、保存料使用よりも健康でなおかつ安全という科学的な根拠は今のところ示されておりません。

 全ての食品添加物は動物実験などでも厳しく試験され、安全性を確認されたもののみ、食品ごとの使用量を決め、人が一生摂取し続けても安全という範囲でしか使用されていません。したがって三度の食事の全てをコンビニの弁当などで賄ったからと言って、それを何日続けようが健康を害するということはあり得ません。もちろん、栄養素の偏り、カロリーオーバー、野菜不足ということは念頭に入れておくべきことではあります。しかし、これらは牛丼店ばかり、ファミリーレストランばかり、ハンバーガー店ばかりの食生活でも懸念材料であることは間違いありません。むしろ、朝食を抜いたりすることの方が、健康で仕事を続けて行くためには、マイナス材料と言われています。

 食品添加物は全て毒であるという情報。自然のものが最も安全であるという根拠のない盲信。動物実験の結果、ある食品添加物を与えたら死んでしまったという情報に対する理解不足。これらの情報は人の実験に置き換えると、何十年も特定の食品添加物を、毎日何㎏も摂取し続けると死んでしまうかもしれないという程度のことが多いのです。しかし不安を持たせることばかりが伝わってきます。勇気を持って自分で確かめるとか、信用のおける公的機関に問い合わせ、確認するという姿勢が望まれます。

 「食事は、一日三度欠かさず、そして楽しく食べましょう」ということの方が大事です。

 *食品添加物を始め、食の安全について週刊誌などメディアでの報道がお茶の間でも話題となっています。この件については別の機会に詳しく書かせていただきたいと考えています。ただメディアの多くは、安全と安心を故意か否かは別として、混同して使っていることだけは知っておいていただきたいと思います。  「交通安全」とは言いますが「交通安心」とは言いません。道路交通法など交通法規を守ることを「交通安全」と言うことは誰でも理解できることでしょう。当然のことながら我が国の様々な食品メーカーは、広い分野にわたり数多くの法律を順守する義務が求められています。メディアの出す様々な食にまつわる情報は「安全」でなく「安心」について言っているのです。これを交通に置き換えると、車は事故を起こすから乗るのも運転するのも止めようとか、外に出ると車の事故に遭うから出るのを止める、という類いになります。                       安全と安心は違うのだということを是非理解しておきたいものです。