第435話 わがふるさとの城下町♪

     

~ 友人の旭日中綬章受章祝賀会 ~

「わがふるさとの城下町♪」                                    昔、そんな歌詞で歌われていた歌があったが、今はもう「わが」という言葉も、「故郷」という言葉も、「城下町」という言葉もあまり使わなくなった。
そういえば、東京の人は「故郷」と言わずに「田舎」と言うんだナと思ったことがある。
たとえば、18歳で上京して来たときだった。下宿のおばさんに「田舎は何処?」って尋ねられたが、「田舎=故郷」だっていうことを知らない田舎モンだったから、何とも返事のしようがなくて狼狽したことを覚えている。
その理由は、今でこそ理解できるが、故郷をもたない東京人には、故郷感が理解できず、東京の外は「田舎」という認識しかないためだと思う。
一方のわれわれといえば、いつまでも「故郷」にこだわっている。
じゃ、お前の故郷は何処か? というと、いま「お義父さん」をヒットさせている、はなわさんが過した九州の佐賀市である。
他に佐賀人としては、お笑い系の島田洋七さんなどが活躍しているようだが、彼に関してわが家ではトピックが生まれたこともある。
というのは、洋七氏の小学生のころ、うちのカミさんが憧れの少女だったというので、テレビが取材に来たことがあるが、子供たちに窘められ、声だけの出演となったりした。
マ、とにかく、佐賀の男性はそういう風だけど、女性は荒木由美子さん、松雪泰子さん、中越典子さん、優木まおみさん、Eガールズの鷲尾伶菜さん・・・となぜか美人系が多い。
だからといって、それ以上でもそれ以下でもないが、それより佐賀市は地震も台風も少ない、住みやすい都市である。現に、野村総合研究所が実施した今年の「国内100都市成長可能性ランキング」によれば、佐賀市は「都市の暮らしやすさ」部門で1位、「子育てしながら働ける環境がある」部門で3位であった。
そんな素晴らしい故郷を捨てた・・・わけではないが、われわれ少年は高度成長の波にのって東京サ、やって来たのである。
今も、高校の同期会をやると50人ぐらい集まる。そして歌う校歌の佐賀城下町の光景にジンとくる。
そんな友の中の一人のO君が、この度旭日中綬章を受章した。
その祝う会のお知らせがきたので、同級生20人ばかりと馳せ参じた。
「田舎」というのは狭いから、皆、同じ小学校、中学校、高校と進んでいく。当然、彼とも小学校時代から一緒だったが、中学・高校と野球部のピッチャーとして腕をふるった頃や、もっと前の子供の頃から、彼は皆から兄貴分として慕われていた。
そんな男が四街道の市会議員になったが、彼なら当然だったのかもしれない。それから彼は千葉県議会議員、県議会副議長となって、その後引退、そして今日の旭日中綬章の受章となったわけである。
当日は200人ちかくの人たちが駆けつけていただろうか。
そんな人たちの話を聞くともなく聞いていると、県議会副議長が旭日中綬章を受章するというのは大変なことだという。そうした勲章とは無縁の民間の世界で生きてきた小生である。叙勲のルールとかは全く分からないが、誠意の人である彼は、与党からも野党からも人望があったから、この日があると聞き、子供のころの彼を知っている小生は、「さもありなん」と頷いた。国政を担う政治家たちの体たらくは昨今の報道通りであるが、彼のような本物の政治家が地域にいることで安堵するというものである。

その彼から、一週間前に電話があって、挨拶というか「何か喋れ」と言う。千葉の彼のことや、政治家としての彼のことは、どなたかがお話されるだろうから、蕎麦の話でもしようかということになった。
イザ当日、この談笑の渦の中、誰も聞く人はいまいと思っているとき、司会者の「蕎麦の評論家ほしひかる先生・・・」なんて大げさにアナウンスしてくれたせいか、急に会場は静かになった。
壇上で私は、O君が子供のころから信頼感があったことや、千葉には千葉在来があることや、お蕎麦の食べ方のポイントと、「たとえ口に合わなくても美味しそうに食べるのが粋です」と付け加えて約3分間お話した。
一番拍手してくれたのはO君ら同級生だったと思うが、お一人千葉の方が近寄って来られ、「千葉在来ってあるんですか。知らなかった。食べてみたい」という話になったので、それだけでもスピーチした甲斐があったかナと思っている。
というわけですから、千葉在来関係者の方、ガンバッテください。

最後にもう一度、O君おめでとう。

〔文・絵(佐賀城 鯱の門) ☆ 佐賀県立佐賀高校卒業生 ほしひかる〕