健康ニュース 9月1日号 スイカと塩について

     

隠居中の大御所暈穀菜「ちょうどよいところに来た。冷やしておいたスイカが食べごろだよ。一緒に食べよう」

隣家のインテリ夫人「うわーっ、スイカですか。大好物です。遠慮なくいただきますわ。ところで食卓塩はどこにありますか」

隠居中の大御所暈穀菜「台所の上の棚にあるよ」

隣家のインテリ夫人(食卓塩を手に持ってスイカに振りかけながら)「うわーっ、美味しいスイカですね。それに甘みもたっぷりですね。塩をかけたから特別甘く感じますね。残暑とスイカも乙なものですね。こんなにおいしく甘いスイカは、何処の産地なのですか」

隠居中の大御所暈穀菜「うん、確かに甘くて旨いな。産地?知り合いの農家で作られていたものだよ。昨日の夕方食べてください、といただいたのだがね」

隣家のインテリ夫人(スイカに食卓塩をかけないで食べているご隠居を見ながら)「先生も塩をおかけになるといかがですか。もっと甘みが増しますよ」

隠居中の大御所暈穀菜「いや、わしは味覚音痴でないから塩をかけたりはしないよ。このまま食べるのが本当のスイカ好きというものだ。旨そうに食べているときに言うのも気が引けるが、食卓塩を振りかけて食べて甘みが増す、という君は味覚音痴だな。君が作る料理を食べなくちゃいけない家族が気の毒になってきたわな」

隣家のインテリ夫人「えっ?どういうことですか?スイカに塩を振りかけて食べることは誰でもしていることでしょう。絶対に甘みが増えますよ」

隠居中の大御所暈穀菜「君の子供のころ、そうやって食べていたのを覚えているのだろうがね。食卓塩は塩化ナトリウ99%以上で、旨味を出すためにグルタミン酸ナトリウムも添加されていると思う。このうまみ成分で美味しく感じるのだろうね。ナトリウムだけだとただ塩っ辛いだけのはずだから。それにもかかわらず、甘みが増えると思い込んでいるのは味覚音痴か、子供のころの親や爺さんばあさんたちがやっていたことの習慣をまねているだけだろうね」

隣家のインテリ夫人「昔は塩をかけても正しかったというのですか?甘みが増したとおっしゃるのですか?」

隠居中の大御所暈穀菜「そうだよ、今の塩が専売品になる前は、ナトリウムのほかマグネシウムとかカルシウムといった成分、いわゆる苦汁(にがり)成分が塩には残っていたのだね。それを隠し味として使うと甘みを感じるということだね」

隣家のインテリ夫人

「スイカをごちそうになりながら大変勉強をさせていただきましたわ。子供たちとお汁粉を食べるときも食卓塩を使っていましたがもう止めますわ」

隠居中の大御所暈穀菜「そうしたほうが良いね。君の旦那が血圧の高いのも食卓塩の使い過ぎかもしれないから、気をつけなさい。食卓塩は、苦汁の残っている食塩よりもナトリウムが多いから血圧を上げる要因となるからね。スイカはもういいだろう。樽酒をもらったから塩を当てに一杯やろう!」