健康ニュース 4月15日号 著者・出版社の狙いは?
2005年秋に食品添加物業界を揺るがした衝撃の書籍が出版されました。東洋経済新報社が発行した阿部司氏の著書「食品の裏側」(以下書籍と書く)です。食品添加物を巧妙に否定する書籍で、発行当時は書店に山積みされていたことを記憶しています。
先日、本屋に立ち寄った時その本が目にとまり、過去に出版元へ質問状を出したことを思い出しました。その回答が届かなかったなぁと思いながら、その本を見ると28刷とあります。ずいぶん多くの人々が読んでいるものだなぁと驚きました。質問した個所はどう書き直されているのかと思いページをめくっていった結果、それは驚きそのものでした。一言一句変わっていないのです。
質問状を出した個所について触れてみます。
本の前半に【添加物の毒性や発がん性のテストはネズミなどの動物を使って(中略)実験結果に基づき決められているのです。「ねずみに、Aという添加物を100グラム使ったら死んでしまった。じゃあ、人間に使う場合は100分の1として、1グラムまでにしておこう」大雑把に言えば、そのように決めているのです】
この著者が本当に添加物の神様と言われていたのかは別として、添加物というものを悪意を持って、消費者に恐怖心を与えようとしているのではないかという疑念は解消されません。
我が国の添加物の使用量を決める方法は、次の通りです。
最初に決めることは、無毒性量です。これはラットやマウスなどの実験動物を使って、有害な影響が見られない最大量の容量を意味します。
次にADI(Acceptable Daily Intake)いう1日摂取許容量を決めます。この1日摂取許容量は、無毒性量の1/100として求められています。人が一生食べ続けても安全と認められた量を体重1キログラム当たり1日に何ミリグラムまでと表されます。
食品添加物使用基準として、食品添加物の摂取量がADIを超えないように設けられています。その定め方は、①使用できる食品の種類の制限②食品に対する使用料や使用濃度の制限③使用目的についての制限④仕様方法についての制限などで、通常これらが必要に応じて組み合わされて定められています。
食品業界では、対象となる性別、年齢、体の強弱なども考慮したうえで、このADI値をさらに下回る量を、実際の使用レベルとしています。
この書籍が世に出て以来十余年、版は28刷を重ねています。ここで巧みな著者の表現について考えてみました。著者は添加物が健康を害する悪い物、とは何処にも書いていません。添加物が健康を害する、と書けば裁判で負けるのが分かっているのです。したがって読者が勝手に悪いものと思いこんでくれる書き方をしています。
例えば*白い粉をドサドサ投げこむ*添加物をじゃぶじゃぶ投入*(明太子に関する個所では)合計で20種類以上の・・・(中略)大量の白い粉をザーッと混ぜ込む、など悪意を持った表現です。どんな家内工業の食品業者でもきちんと計り、必要量以上は使用しません。明太子に関しては多種の添加物使用を、大量使用と錯誤させる表現を用いています。毒性、有害、恐ろしいという印象のみ強調しています。添加物のメリットが、健康を害するということに関して、科学的に何一つとして証明されていません。