健康ニュース 5月1日号 牛乳とめざしのカルシウム
隣家のインテリ夫人「公民館の健康講演を聴いてきました。牛乳とカルシウムという演題で面白かったです。配られた資料ですがご覧になりますか」
隠居中の大御所 暈穀菜「ごみになるからいらないよ。あんな講師の話を聴きに行くなんて暇だね」
隣家のインテリ夫人「あんな講師ですって?ご存じなのですか」
隠居中の大御所 暈穀菜「彼の著書を読んだことがあるよ。今日の講演も、牛乳にはカルシウムが多いが、もっと多い食材もある。例えば丸干しイワシを数匹食べると牛乳よりうんと多くのカルシウムを摂取できる、とか言っていたのじゃないかな?」
隣家のインテリ夫人「その通りですわ」
隠居中の大御所 暈穀菜「講師の名前を知った時、講演内容が想像できたよ」
隣家のインテリ夫人「でも言っていることは間違いではないでしょうね。配られたデータにもきちんと書いてありますわ」
隠居中の大御所 暈穀菜「100g中に牛乳は220㎎、丸干しイワシ1尾50gを2尾食べると、220㎎のカルシウムが計算上は摂れることになる。3尾食べると牛乳以上のカルシウム摂取となる、と言っていただろうね」
隣家のインテリ夫人「その通りですよ。でも間違ってはいないですよね」
隠居中の大御所 暈穀菜「講師がわざと言わなかったのか、知っていないのかは別として、カルシウム量を話すときに100g中に、と明言していたかな?言っていなかったのだろうね」
隣家のインテリ夫人「でも栄養成分なんて全て100g中にどれぐらい含まれている、というのは常識ではないですか」
隠居中の大御所 暈穀菜「常識は時代が進化したら変わるものだよ。ところで100g当たりの牛乳と丸干しイワシの水分量はどちらが多いと思うかな?当然牛乳のほうが多いことは分かるよね。牛乳の87%ほどは水分とされている。一方丸干しイワシの水分は約50%ほどだ。水分はエネルギーがゼロだから、水分を除いた100㌔㌍当たりではどちらがより多くカルシウムを含んでいると思うかな。答えを言おう。100㌔㌍当たりだと牛乳のカルシウム含有量は160㎎で、丸干しイワシのそれは130㎎で逆転している。従来の100gあたりの栄養素含有量でなく、100㌔㌍当たりの栄養素量を栄養素密度と言って、新しい考え方だ。一定のエネルギーをとるためにどれだけの栄養素を摂取できるかの指標となって、今後注目されていくだろうね。高齢者とかエネルギー摂取を制限すべき対象者、例えばダイエットしなくてはいけない者にとっては、より少ないエネルギーで、効率よく必要とされる栄養素を摂取することが欠かせない。そういう人にとっては、この栄養素密度という新しい考え方が重要になっていくだろうね」
隣家のインテリ夫人「難しい話のような気もしますが、分かったような気もしますわ。でも最も分かったことは、水にはエネルギーがない。だから牛乳や丸干しイワシから水分を取り除いたらどうなのか、ということを考えなくてはいけない、ということですね」
隠居中の大御所 暈穀菜「それだけ分かればいい。では美味い冷酒で一杯やろう。肴はマイワシをいただいている。焼いて丸ごと食べるとかなりのカルシウム補給にもなるからね」