第488話 「国境なき江戸ソバリエ 七箇条」
北京紀行―本編1
この度、縁あって北京市の中学校と大学で蕎麦打ち体験教室を実施することになった。さっそく江戸ソバリエ協会内で北京プロジェクトを立ち上げた。
準備にあたっては、これまでの海外での蕎麦打ちボランティアの経験から、留意のポイントとして「国境なき江戸ソバリエ 七箇条」なるチェック項目を協会で設けているので、それにしたがった。
1) チーム結成(チーム力)
2) 現地の蕎麦打ち会場と設備の確認、持参すべき蕎麦打ち道具の調達
3) 蕎麦粉などの食材持参品の調達と、通関時の説明資料の準備
4) 現地の水の確認
5) 蕎麦交流のテーマの設定と内容(振舞蕎麦、デモ打ち、説明など)の検討
6) 衛生・ソバアレルギーなど事故防止対策
7) 国際電話対応の確認、行動予定表と緊急連絡先表の留守係への提出
蕎麦振舞は、蕎麦打ち、茹でる、盛り付け作業からなっている。これらをスムーズに行うにはチーム制が有効である。だからイベント時には、日頃の仲間どうしが集まることが望ましい。だから、私は一本釣り的なお誘いではなく、チームに対して声をかけることにしている。
今回は、江戸ソバリエ・ウンナンの会の平林さんに相談して、プロジェクトメンバーが決まった。このチームづくりが第一ステップだと思っている。
それから、日本式の蕎麦を食べてもらうためにやはり日本産の蕎麦粉を持参した方がいい。なぜかというと食材はその国の食べ物に合ったように育つものである。《蕎麦バン》を食べる国はそれに合うようなソバに育つ。《冷麺》を食べる国はそれに合うようなソバに育てられる。《ざる蕎麦》を食べる国はそれに合うようなソバに育てられる。
大切な蕎麦粉だが、うっかりすると空港で没収されることがある。そのためにはイベントの目的や計画・内容を書いた資料を用意していざというときの説明に使えるようにしておく。
これまでもサンフランシスコ行のときもクレームが付けられたし、他のチームでも同じようなことが起こっていることを聞いている。
アクシデントはめったに起きないが、仮に蕎麦粉が没収されればせっかくの催事がアウトになる。6)のアレルギーや事故対策もそうである。めったなことは起きないにしても、もし起これば全てが台なしになる。リーダーとしての責任は大きい。
企画を実行するとき、石橋を叩いてひび割れた音がすれば用心して中止することもあるだろうし、ひび割れた音がしたとしても突き進むこともあるだろう。
いずれにしろ、石橋を叩くという行為そのものは、リーダーの役割として必須であると思う。
〔文・挿絵 ☆ 江戸ソバリエ北京ブロジェクト ほしひかる〕