健康ニュース 11月15日号 糖質制限ブームに思う
「肥満対策にどんなことをやっていますか」と生活習慣病対策教室でお聴きすることがあります。明らかに肥満でない方はもちろん痩せていると思う方にも「糖質制限をしています」と言われる方が多いのには驚きます。糖質制限という言葉を耳にしてから何年ぐらい経ったのでしょうか。
アメリカで10年以上前に拡がったダイエット法「糖質制限」の対象者は、BMIが30近い人を対象としていました。減量のためには炭水化物を極力制限、タンパク質や脂質中心のメニューにしなさい、という趣旨で、学会発表されメディアがセンセーショナルに報道したと記憶しています。
この説を日本では、若干趣旨違いの解釈をしてしまったのではないでしょうか。
今、多くのメディアは、手軽に痩せる手段として「糖質制限」を伝えているように思えてなりません。そのため痩せる必要のない、BMIが25以下の女性などにも、糖質制限が広がり多くの人が実践していることは関係者の誰もが認めるところでしょう。
何処から見ても太っているとは思えない、にもかかわらず糖質制限を受け入れて実行しているのです。
食生活指導に関与して農林水産省は、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスを」というキャッチコピーを、サプリメントなどの飲食物に表示するよう指導しております。また厚生労働省が指導する食生活の摂取基準は、三大栄養素と言われるものの中で、糖質を含む炭水化物は全摂取カロリーの50~60%が望ましいとしてあります。ちなみに他の栄養素は、タンパク質が13~20%、脂質が20~30%となっています。これら三つの栄養素を過剰に摂取した時、タンパク質は排泄処理されますので、手っ取り早く減量するには炭水化物の中の糖質を制限しよう、という結果になったのは、疑う余地もないと考えます。
前述したようにアメリカで紹介された糖質ダイエットは、BMIが30近い方に適した方法であり、BMIが25以下の人がこのダイエット法を採用した場合、どのような結果が待ち受けているか考えてみました。
糖質ダイエットというからには主食である炭水化物の摂取を制限することになります。つまりお米、パン、麺類などの食事量を減らすことになります。アメリカなどでは主食、副食という観念があまりないことも知っておきましょう。(西洋料理のメーンデッシュとは、献立の中心を意味し、肉や魚が主です)
極端な肥満でもないのに実施した糖質ダイエットのたどり着く先は、タンパク質、脂質中心の食事という結果になります。そして当然のことながら脂質の体内蓄積量が増えていきます。この結果見た目は痩せタイプであっても、体内に脂肪を蓄えているという隠れメタボが急増することを警鐘する専門家が多くいます。一年以上糖質制限を続けた人を追跡調査の結果、心疾患、腎臓疾患を含む死亡率が極めて高くなった、という研究発表がありました。
明らかにメタボなら対策が早く打たれるでしょうが、糖質制限から発生する隠れメタボは気づいたときは手遅れとなりかねません。それでも糖質制限をしますか?