第524話 蕎麦が日本を健康にする

     

~第一回日中蕎麦学国際フォーラムから~

 平成31年は1月8日の新春講演会が仕事始めだった。この日は、新年会も兼ねていたので、たくさんの方が聞いてくれた。
演題は、昨年の海外での体験から、「蕎麦が日本を健康にする」とした。
海外体験というのは、昨秋に北京で開催された中日蕎麦学国際フォーラムでのことだ。
中国へは、40年前頃、そして8年前、昨年3月、昨年11月と訪問を重ねているが、その度にスゴイ速さで成熟化していることが感じられる。そして国民は健康志向になってきているように見える。
国際フォーラムでは、私も仲間の協力のもとに講演させてもらったが、それは貴重な体験であった。中国側の発表では、①「蕎麦が中国発祥である」という誇りをもっていることと、「その蕎麦を独自に発展させたのは日本であること」を認めているという発言もあった。
私たちは、その日本蕎麦への関心と現代中国国民の健康意識と、どう結びつくのだろうか? そんな思いをもちながら、フォーラムに参加していた。
フォーラムは二日間にわたって開かれたが、話や蕎麦打ち交流をしているうちに気が付いた。彼らは日本の蕎麦文化から【健康文化】を採り入れようとしているということに。そしてそれがまたこのフォーラム開催の目的の一つでもあるのだろうと思った。
しかも、その強い気持は、中国国民の目標であるかのごとくわれわれに伝わってきた。

 翻って、これからの日本の蕎麦界は、何を目標とすべきだろうか?
美食だろうか、観光だろうか?
そのいずれを進むにしても、やはり「和食の思想」のもとに「蕎麦で日本を健康に」ということを戦略をもつべきだろう!とあらためて思う次第である。
何しろ日本は、憲法にまで健康を謳っている国なのである。
 「第二十五条:すべて国民は、健康で文化的な 最低限度の生活を営む権利を有する。」

Better Living as Human
〔文 ☆ 江戸ソバリエ協会理事長 ほしひかる
写真:フードボイス