健康ニュース 2月15日 高校生とサプリ
2019/02/15
「健康と食について」の講演後に、次のような質問を受けました。
体育部に入り活動をする高校生を持つ母親が「子供がもっとパワーをつけたいと言って、毎日サプリメントとしてプロテインを飲んでいます。もっと食事に重点を置きたいのですが、プロテインを飲み続けても大丈夫でしょうか」
「日々どのような食事を摂っているのかが分からない限り、プロテインをサプリメントとして摂っても良いか否かについてはお答えできかねます」と話したうえで以下のことを述べました。
「サプリメントは効力の面から多岐にわたって様々な種類のものが流通しています。プロテインについても是非を言う前に、子供さんの食事内容をチェックすることが欠かせません。朝昼夕、一日3回の食事はもちろん、間食としてどんなものを飲食しているかを知っておいてください。体育部で活動をしているならば、パワーアップのためにタンパク質であるプロテイン取りたい、という高校生の気持ちは理解できますが、本当にたんぱく質が不足しているのかどうかは分かりません。気になるなら専門の栄養士さんに相談をされたらいかがでしょうか」
高校生などの若い年齢のスポーツマンは、身体の成長と運動の両面でエネルギーを消耗するために、食事などだけではエネルギー不足になるということもあり得ます。したがってサプリメントなどで補うという発想があっても不思議ではありません。
しかし高校生がパワーを付けるためには、もっとエネルギーが必要なのかもしれませんし、他の栄養素が不足しているのかもしれません。エネルギーが不足しているのだとしたら、プロテインというサプリメントで補わなくても、もう一膳ご飯を食べることによって解決するかもしれません。
栄養学の面から言っても、お米のたんぱく質は運動するためのエネルギー源となります。体を作り上げていくプロテインだけを摂っても、体を動かす運動をしなくては、筋肉も増えていかないことを、母親も高校生も知っておくほうが良いでしょう。
お米離れが言われて久しいですが、お米には炭水化物が八割近くあるだけでなく、タンパク質や食物繊維も含んでいます。
若い世代だけでなく、高齢者と言われる世代はもちろん一般の人々にももっとお米を主にした食生活を再考すべき時期にあるのではないでしょうか。
糖質制限ブームは即米離れの食生活となります。
20年以上前、アメリカで流行ったBMI値が30前後という超肥満の人々を対象にした、炭水化物制限食事療法が、やがて糖質制限食事療法になり、今ではBMIから判断しても決して肥満でない人々まで、美容目的などで糖質制限を行っているようです。糖尿病、肥満などの懸念のない人にとっては、過剰な炭水化物制限とか糖質制限などは再評価すべき時期になっています。
日本糖尿病学会では、2016年の診療ガイドラインで「炭水化物量摂取量と糖尿病の発症リスク、血糖コントロールとの関連は確認されていない」と発表しました。
農林水産省の食糧需給表によりますと、ピーク時(1962年)の1人当たりの米消費量は、年間118㎏であったのが、下降線をたどり続け、2016年にはなんと54㎏となっています。総務省の調査でも、1世帯当たりの主食の構成は、お米を抜きパンがトップとなっています。この事実を嘆く前に、政治の世界も含めて関係者が何故、「和食が世界遺産になったのだからもっとお米を食べよう!」ということを声高らかに訴えないのか不思議でなりません。
成長真っ盛りの高校生が、正しくお米の特徴を学べば、パワーを身につけるためにプロテインを飲む、という発想も出なかったはずです。