第562話 笑いが一番!
彩の国いきがい大学講演会から
「彩の国いきがい大学」に所属している平林知人さん(江戸ソバリエ・ルシック)から依頼され、三遊亭金也さん(江戸ソバリエ)と三人で蕎麦の話をすることになった。題して「蕎麦から学ぶ人生100年」、テーマの大きさに驚いた。
平林さんは多くの人を巻き込む天才だ。この日も北川育子さん(江戸ソバリエ・ルシック)や高橋龍太郎さん(江戸ソバリエ)や高橋正さん(江戸ソバリエ)が進行を手伝ってくれた。
開幕は、校歌にしているという「四季の歌」の斉唱だった。この歌は聞いても歌っても、素直になれるいい歌だから、校歌としては最適だろう。
本番は、三人が隣の人を紹介する他己紹介から始まった。
壇上に登って客席を見れば馴染みのソバリエさんの顔も見える。全体では約150名のお客さんらしい。
この後に、トップバッターとして平林さんが「ここでしか聞けない海外蕎麦事情」を披露した。
続く私には「健康」というテーマが与えられていた。
話は、「蕎麦がヘルシーとされるのは、なぜか?」で口火を切った。
それは、米や麦の胚芽は美味しくないから、精米の段階で棄てられる。一方の蕎麦は全粒粉、つまり胚芽に相当する子葉も全部製粉する。そこが大きない違いということから話し始め、
①基本的な五大栄養素のこと、
②そして1930年代になって発見されたルチンや、
③1981年頃から提唱され始めたGI値についてなど縷々語った。
そして、蕎麦(a)、蕎麦汁(b)、薬味(c)、蕎麦湯(d)と、蕎麦全体を見直せば、
(a)全粒粉を利用する蕎麦は健康食。
(b)つゆ(出汁)の旨味は笑顔になれる。
(c)穀類にはビタミンCが入ってないけれど、薬味にはビタミンCが入っている。だから麺類に薬味を使うのは理に叶っている。とくにルチンはビタミンンCと相性がよく、さらに効果を発揮する。だから蕎麦と薬味はいい関係だといえる。
(d)ナトリウムを輩出するカリウムは水溶性、30%は蕎麦湯に溶け出している。
だから、「蕎麦も、蕎麦汁も、薬味も、蕎麦湯も全て味わってほしい」と訴えた。
最後は、「食べ物は薬ではないので、今まで聞いた理屈は全て忘れ、楽しく美味しく食べてください」と申上げて、締めた。
最終の登板は、三遊亭金也師匠だが、彼の大きな身振りと熱い口演で、広いホールは終始笑いの渦。
一日が無事終了した帰り際、いきがい大学の幹部の方たちから「お蔭さまで大好評でした」とご挨拶を頂いたが、それは偏に金也師匠の熱演によるものだろう。
話や理屈や食べ物よりも、健康には笑いが一番であることをお客様の笑う顔からハッキリ感じた次第である。
〔文 ☆ 江戸ソバリエ協会 理事長 ほしひかる〕
写真:高橋正