<コンビニ創業戦記・別伝>「DCVS回想録」第42回

      2017/01/24  

≪『ローソン親善大使』全国訪店録・一期一会写真集≫(その7)

ーー2002年(平成14年)5月~2006年(平成18年)5月――

「ローソン親善大使・雑感」①

Ⅰ・<『ローソン商人道』の布教師として>

私にとって、全国のDRを訪問することは、それぞれの地域性や土地柄、独自の風光・景観、そして積み重ねられた歴史や伝承文化など、その土地なりの持ち味の違いについて、認識を深めるよい機会となった。

それはまた、一店一店のお店についても、云えることである。

同じ地域にあっても、そのお店の所在する場所によって、来店されるお客さまが、そのお店に期待される要素は、一店一店微妙に異なるものである。

お店のオーナーさんやクルーさんたちも、一人一人の人柄や性格、考え方や欲求等は、当然ながら、それぞれである。

フランチャイズチエ―ンとして、全国どこでも同じ看板で、標準化された店舗外観であっても、実は、一店一店に、それぞれのお店にしかない個性が、必ず生まれていく。

お店の個性は、、そのお店を経営するオーナーさん、そして、そこで働くクルーさんたちによって、日々の積み重ねの内に、いつの間にか作られていくものである。

その「お店の個性」のことを、私は、『店風(=ストア・カルチャー)』と呼ぶ。

私の商人としての信念は、≪店風が商売をする≫である。

お客さまにとって、「良い店風を創れば、お店は必ず繁盛」する。

「悪い店風を作れば、必ず衰退」する。

このことは、私が「ローソン東富士ゲストハウス」時代に、加盟店研修の度ごとに、万感の思いを込めて強調し続けた信念である。

≪「いつもお客さまに満足して頂ける店風」=「いつもお客様に愛され、信頼される店風」≫を築くことができれば、お店は必ず繁盛する。

どんな商売であれ、良い店風のお店か、悪い店風の店かは、店頭ファザードを観察し、店内を一周りすれば、一目了然、すぐに分かるものである。、

これは商人道の基本であり、ごく当たり前のことである。

商人としての仕事に携わる人ならば、誰でも常識として百も承知のはずであるが、現実の商人世界では、このことを、本気で、熱心に追求し、真剣に、体を張って、実践し続けている人は、極めて少ないと言わざるを得ない。

しかも世の中には、商人道とは全く真逆の事象が、あまりにも多く頻出しているのは、まことに慨嘆に堪えない最近の日本商業の現実である。

フランチャイズチエ―ン本部の究極の使命は、それぞれの加盟店に、いかにして「商人道実践の店風」を培って頂くかに尽きる、と考えている。

親善大使訪問で、私が常に心がけたことは、この『良き店風創り』の大切さを,、いかにして深く体感して頂き、心から実践し続けて頂くかであった。

まさに私自身は、「ローソン商人道の布教師」の心積りであったのである。

たとえ一期一会の短い瞬間であっても、その瞬間に火花の散るような感動を、体で感じてもらえる出会いにしたいと、いつも念願し、その行動を心掛けた。

そしてまた、各地のDOMやSVたちとも、『良き店風創り』の重要性を、同行の道すがらや、お店現場で、自らの経験や感慨を通じて、熱く語り続けることに努めたつもりである。

では、その『良い店風創リ』は、どうすればできるのか。

簡単な秘策や近道は、あるようでない。

経営者の使命感と熱意と執念、そして地道な努力の積み重ね以外に道はない。

商売の基本、当たり前のことを、諦めずに、地道に、日々、熱心に、積み重ねて、お店の良い習慣を作り、お店の良き体質・良き伝統を築き続けること、にしかない。

一言で云えば、「商人道を実践し続ける=商人の道を究め続けること」、に尽きるのである。

だが、そう云ってしまうと、実も蓋もないことになる。

私の考える『良き店風創り』の手順を、少し丁寧に説明すると、次のようになる。

まず第一に、「良き店風創り」の主体者は、経営者・オーナーであることを自覚して頂くことである。

そのためには ①≪自分の商売に惚れよ≫

②≪自分のお店に惚れよ≫

③≪お店に関わる人に惚れよ≫、 の3点が絶対条件である。

この3点について、オーナーさんが自分で考え、自分の本心の言葉で表現・明示して、日夜熱を込めて語り、本気で実践し続けることである。

これが「良き店風創り」のスタートラインである。

その上で、第二に、従業員・クルーさん一人一人の気持ちを掴み、やる気を高めて、お店の主役に育て上げることである。

分かり切ったことであるが、あくまでクルーさんがお店の主役である。

そのために、 ①≪ハッピーワーキング(=挨拶・笑顔・チームプレー)≫、

②≪基本の徹底(=定物定位・整理整頓・清潔清掃)≫

③≪コミュニケーション・ノート(=情報の共有・意思疎通・報連相)≫、の3点が必要条件である。

この3点について、オーナーさん自らが、熱心に卒先垂範し続けることである。

これが「良き店風創り」の土台となる。

そして、第三に、『良き店風創り』の仕上げは、組織経営・事業経営を実践することである。

家業経営であっても、盤石な「良き店風創り」は可能であるし、それも一つの行き方ではあるが、今日的な社会状況を考慮し長期的な視野に立つ時、クルーさんたちの人生計画も考えた、事業経営、組織経営が望ましいと考えるのである。

そのためには、①≪分業責任体制(=役割分担・権限委譲・参加経営)の実践≫

②≪目標管理(=P・D・C・A・サイクルを回す)の実践≫

③≪ビジョン経営(=将来ビジョン・公正評価と処遇・生涯計画)の実践≫、の3点が十分条件である。

この3点についての経営者・オーナーさん自身の、自らの商売に対する強い使命感と熱意と執念が不可欠である。

だがその大前提を成すのは、何といっても、フランチャイズチエ―ン本部の経営理念とその経営姿勢であろう。

特にいま、この国の日々の暮らしのライフラインを担う生活基幹インフラとなっているコンビニチエ―ンにおいては云うまでもないことである。

私は、「フランチャイズシステムにおける商人道の実践」とは、ワンフレーズで表現するとすれば、≪『お店はお客様のために、本部はお店のために』のサイクルを回し続けること≫であろう。

本部と加盟店が、この理念と経営姿勢で、両者ともに力を合わせて、本気で実践し続けるならば、お客様の信頼と支持を得て、必ず成長・繁栄していくことは間違いない。

往々にして、この「商人道のサイクル」が形骸化して、いつの間にか逆さまになってしまうのである。

つまり、【本部が、本部利益・本部都合を、全てに最優先し、お店を、そのための手段としてしか扱わなくなってしまう】、ことである。

これでは、加盟店に「良き店風」が生まれるはずがない。

そうなると、「一番大切なお客様が忘れられることになる」から、そのチエ―ンが次第に衰退していくのは理の当然であろう。

フランチャイズチエ―ン本部の責任は、極めて重いことを忘れてはならない。

ローソン親善大使の活動を回顧しながら、「商売の原点」、「創業の原点」、「経営の原点」、「フランチャイズの原点」について、深く思いを馳せることになった。

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