健康ニュース 6月15日号 高血圧の新治療目標

     

4月25日に日本高血圧学会は、「高血圧治療ガイドライン2019」を発表しました。

それによりますと、高血圧の診断基準、(上140以上、下90以上)は従来通りですが、この診断基準とは別個に、患者が目指す数値として治療目標が設定されました。この治療目標は上が130未満、下が80未満ですが、この診断基準と治療目標は大変重要な意味を持っています。どう違うのでしょうか。

誤った考えを持つと、「高血圧治療新基準で、最終的に利益を得るのは製薬会社と薬を処方する医者です」という穿った情報を鵜呑みにしかねません。

小子は、新ガイドライン情報を3月に入手。健康の勉強会仲間とか健康講演などでは「ガイドラインの正しい理解」について説明してきました。しかし5月早々に案の定SNSで大意次のような投稿メールがありました。

「高血圧の新基準では国民の二人に一人が高血圧になります。健診で血圧が130を超えたら病気にされ血圧降下剤を処方されるということです。真の目的は血圧降下剤の普及で、国民の健康などに目は向いていない確信犯的な犯罪です」

このような説は今後も続出することでしょうが、的を射た説明とは言えません。

結論から言いますと、これらの説は、診断基準と治療目標をごっちゃにしていると断定できます。自分に都合よい解釈のみ主張していると言えます。

正しい読み方は次のように考えますが、異論や異議はあるでしょうか。

降圧剤を投与される対象は、あくまでも上が140以上、下が90以上です。

では治療目標の上が130未満、下が80未満という数値は、何を意味しているのでしょうか。

「治療目標の数値内を保つことにより、今より脳卒中リスクが3~4割減、心筋梗塞は2割減となる」という調査結果から判断された数値なのです。 いわば高血圧を起因とする生活習慣病発症のグレーンゾーンといっても良いでしょう。

従って上が130、下が80を超えたからと言ってすぐ降圧剤を服用しなくてはならないというわけではありません。上が130~139、下が80~89でも、生活習慣の見直しなどにより改善する場合もあり得ます。また同範囲内でも糖尿病や腎疾患などがある場合は、高リスクとして薬の服用による治療対象となるケースも考えられることでしょう。

血圧を下げるほど、脳卒中や心筋梗塞リスクが下がるのは明らかです。従ってグレーゾーンともいえる範疇にある治療目標数値へ入ったならば、生活習慣を見直そうということです。投薬対象とは書いてありません。従ってSNS情報は誤りです。それよりも検診などで対象者を早く見つけ、早い段階で適切な対処法を考えることが重要なのです。

SNS発信者が言っているような考えは、時によっては治療時期の手遅れということも考えられます。そんな時でも、SNS発信者は責任を取ってくれません。週刊誌など他のメディアでも同様の記事が出ることが予測されます。新しい健康情報を目にするときは、鵜呑みにせず、専門家に確認するという姿勢が、私たちの健康を守るのです。