第622話 頑張ってます!東京圏の蕎麦

     

メールマガジン『ソバリエにゅうす』3月号でお知らせしたが、東京圏の蕎麦が頑張っている。
 *深大寺在来は昨年、JA東京中央会の江戸東京野菜の特別枠に登録された。
 *千葉在来が今年、日本蕎麦協会会長賞を受賞した。
東京圏というのは、現代では東京・神奈川・埼玉・千葉を指す。だから千葉に在っても「東京ディズニーランド」は許される。その東京圏の蕎麦の栄誉は江戸ソバリエとしても嬉しいことだ。
だが、現実の東京圏の蕎麦生産量が寂しいのはご承知だろう。
平成30年度の蕎麦生産量の1位は北海道11,4000t。対して東京3t・神奈川10t・埼玉170t・千葉100tである。分りやすくいえば、東京・神奈川ほとんどゼロ、千葉が約100t、埼玉はその2倍。北海道11,4000tに比べれば話にならない。といってしまえばそれまでだが、だからこそ深大寺在来のJA東京中央会への登録、千葉在来の日本蕎麦協会会長が光ってるというものだ。何せ、中心となっている深大寺一味会も千葉在来普及協議会も‘ヤル気’に満ちているところが、素晴らしい。ヤル気さえあれば今後、蕎麦畠は増えていくだろう。

ここで、埼玉・千葉・東京のこれまでの蕎麦生産量の推移を見てみよう。
〔埼玉〕
蕎麦生産量の県別統計をとり始めたのは昭和33年から、
昭和33年160t、
昭和34年110t、
昭和35年100t、以降はほぼ壊滅。
そして近年は、
平成27年220t、
平成28年210t、
平成29年220t、
平成30年170t、
埼玉の蕎麦生産量が増えたたのは、三芳の船津さん(江戸ソバリエ講師)の働きが寄与しているのだろう。
*参考
danchu TOKYO蕎麦めぐり。 「一東庵 編」に船津さん登場。
https://dancyu.jp/series/tokyosoba/
また江戸ソバリエ協会で『蕎麦王国埼玉』を出版したのは、麺類店数が東京に次いで全国2位の力を発揮して、蕎麦王国になってほしいとの願いを込めてのことだった。
〔千葉〕
昭和33年130t、
昭和34年130t、
昭和35年120t、
昭和36年100t、以降はほぼ壊滅。
そして近年は、
平成27年50t、
平成28年50t、
平成29年60t、
平成30年100t、
つまり千葉は昭和36年並みに戻ってきたわけだ。
ただ海を持っている千葉は漁業にも従事するから、やや農業関係が少ないのであろう。以前フードボイスで千葉の魚や肉の缶詰業をされている地元企業の会長に取材したとき、「畜・農・漁業が豊かな千葉はいつでも独立できる」と冗談を言われたことがあったが、千葉はそんなクニである。
〔東京〕
昭和33年30t、
昭和34年60t、
昭和35年50t、
昭和36年30t、
昭和40年までは二桁あだったが、以降は現在まで壊滅状態。

とにかく、東京圏の蕎麦としては、
①当面他県のことはさておくとして、先ずは好敵手埼玉に迫るために、深大寺・千葉にも船津さんのように本格的に取り込むプロの生産者が現れたらいいと思う。
それには、東京の場合は農業が壊滅だからこそ、江戸東京野菜コンシェルジュやJA東京では「都市農業」ということを訴え、いま江戸東京野菜のブランド化の道筋が見えてきた。だから、深大寺在来と千葉在来、そして埼玉の三芳の蕎麦や秩父の蕎麦が都市蕎麦生産の旗手として輝いてもらえばなお嬉しい。
②それから、私の経験では、深大寺蕎麦の性質はそれを栽培してい深大寺の人が、千葉在来の性質はそれを栽培している千葉の人が一番熟知している。そのことを踏まえて生産者と直結し、その地域でトップクラスの蕎麦麺や蕎麦料理の店ができれば、世界中から憧れて食べに来たり、修業に来たりする日があると思う・・・。

とまあ、こんな拙文を書いていると、映画『翔んで埼玉』を思わせるが、東京圏の蕎麦もわるくない。さらに大きく翔んでほしい。

ほしひかる
江戸ソバリエ協会理事長
深大寺そば学院學監
武蔵の国そば打ち名人戦審査員