健康ニュース 7月15日号 医者と健康番組

     

最近特に気になっていることは、TV局各社が競うように健康番組と称するものを電波に流すことと、しかもその番組が時には2時間とか3時間という長時間番組の編成になっていることです。

知人の医師は次のように言っています。

「患者からTVで言っていたので〇●を飲んでみたいのですが・・・、という質問を受けることが年々多くなっている。そんな時、どんな番組なの?と質問をすると必ず〇△局の凸凹健康番組です、と答えが返ってくるので、あれは健康番組といえるものではなく、健康娯楽番組ですよ。そんな真剣に見ていなくて良いですよ、ということにしている」とのことです。

 番組に参加しているタレントなどもほぼ中高年で、視聴者と同世代が多いのです。なぜこのようなことを言いきれるかと申しますと、視聴率調査の結果、TVを見ている人は性別に関係なく中高年層が多いということが分かったのです。結果として各局とも中高年層に最も関心のあることは、健康と経済ということで健康娯楽番組が増えたわけです。

 この健康娯楽番組に共通していることは、視聴者自身にも当てはまるかもしれないという不安を何気なく与える番組編成となっていることです。

 健康娯楽番組がクライマックスに近づいたころ、「◇◆は、がんに有効と発表されています」とか「◎■は認知症予防対策に勧められています」と言い始めます。これを信じると大変危険なリスクがあります。逆にがんとか認知症といった疾病治療の遅れや治療機会を逃し、いざ治療という時にはすでに手遅れとなってしまうことが多いのです。

 このような事態になってもTV局は決して責任を取ってはくれません。なぜならば番組放送のどこかで必ず「これは個人の体験、感想で治療効果を言っているのではありません」という趣旨を、さほど大きくない文字で画面に出していることで、責任を取る必要がないのです。高齢者にとってはよほど注意してみないと読める文字サイズではないでしょう。

 さらに追い打ちをかけるがごとくに、何人かの体験者が、商品(サプリメント、化粧品や健康器具を含む)の効果について語ることもあります。しかしこれをもってエビデンスがあると考えるのはあまりにもお人好と言わざるを得ません。体験談の寄せ集めは決してエビデンスではないということを知っておきたいものです。

 国内で5万人の以上の医師が係わっている医師専用サイト、メドピアの調査によりますと、健康娯楽番組の反響は少しあると答えた医師は51・5%、日常的に感じていると答えた医師は37・6%に達しています。そして多くの医師が懸念することは

①患者が自分に都合よく受け止めていること

②希少な例を自分に当てはめて考えてしまう、ということです。

 視聴者には「健康・医療情報は知っておきたいが、自分に当てはまっていても深刻には考えたくない」という気持ちがどこかにあるはずです。良い表現かどうかは別として、先行きの健康に一抹の不安のある世代と、視聴率を上げたいTV局の思惑が一致し続ける結果、今以上に健康娯楽番組は増え続けていくことでしょう。