健康ニュース 9月15日号 健康とメディアの姿勢

     

 1965年のことですから、今から半世紀以上前のことです。TVの人気番組の一つに「アフタヌーンショー」という今でいう情報番組がありました。その番組で食品添加物を批判的に訴える方が、「食品添加物はこんなに怖い」という趣旨のもと、豆腐に使用されていたトフロンという食品添加物を金魚鉢に入れました。

 しかし金魚は悠々と泳ぎ続けていました。これでは話にならない!と彼は考えたことでしょう。CMタイム中に彼がやったことは・・・。コマーシャルが終わった次の画面に多くの人が驚きました。なんと金魚がぷかぷか浮いていたのです。やはり食品添加物は怖いと誰もが考えたことは疑う余地のないものでした。

 後日、この食品添加物メーカーは、TVに出演し実験した者を訴えました。裁判の結果、金魚は食品添加物で死んだのではなく、食品添加物を批判する実験者が、CMタイムに金魚鉢にアルコールを添加したからだという結論に至りました。このことを報道したメディアは残念ながらありませんでした。

 それから半世紀もたっているのにもかかわらず、TVをはじめマスメディアの健康に対する報道姿勢はあまり変わっていないのではないでしょうか。

 全ての報道がそうであるとは言いませんが、多くは初めに結論ありき、という論法で構成されていることが多いように思います。皆様はどのように受け止めておられますか。

 例えば、農薬は健康にとって悪影響を与えるので、無農薬の野菜や果物が良い!という論法。

 例えば、農産物生産者の間で稀に発生した農薬による健康被害を、さも使用した人たち全てに被害が出ると決めつける論法。

 例えば、トマトのリコピンが健康素材としてよいという発表があると、あたかもトマトさえ食べておれば健康を維持できるという論法。

 例えば、実験器具の段階では有効であるナットキナーゼを、人体でも同様な効力があるという論法。

 数え始めると次から次へと限りなく出てきます。

 そこで代表的な例を挙げてみます。

 ネットには、「有機JAS,特別栽培の安心なリンゴ」というようなコーナーがあり「私たちは環境安全を願い、土壌を汚す化学肥料、除草剤、土壌消毒剤は一切使用していません」と説明書きがあります。

 知っておきたいことは「有機栽培」とは農薬を全く使用していない、ということではありません。地域、時期によって認められている農薬以外は使用しないということです。ちなみに無農薬野菜というような無農薬という表示は、消費者に誤解を与えるということから許可されていませんことも知っておきたいものです。

 今から数年以上前、「奇跡のリンゴ」ということが話題になりました。全く農薬を使用せずリンゴを生産した方がいたのですね。今、その方の奥様は・・・。ご主人自身は・・・。今も無農薬リンゴを生産しているのでしょうか?答えは「NO」です。何年も前に禁止になっている農薬を、あたかも使用し続けているかのような報道姿勢は、私たちに誤った選択をさせてしまう恐れがあると思いませんか!それが奇跡のリンゴであったと思います。