第674話 赤ずきんちゃんのガレット

      2020/12/14  

『世界蕎麦文学全集』物語16

 赤ずきんちゃんの童話を読んだことのない人でも「赤ずきんちゃん」という名前だけは聞いたことがあるだろう。「赤頭巾」というのがインパクトを与えているからだろう。 
 童話はこうだ。
   ~ 昔むかし、ある村に、これまで誰も見たことのないような、可愛い女の子がいました。母親も祖母も、その子をとてもかわいがっていました。祖母が作った赤いずきんがとてもよく似合うので、その子は皆に、「赤ずきん」と呼ばれていました。ある日、母親が《ガレット》を作り、赤ずきんに言いました。「おばあちゃんの様子を見に行っておくれ。身体の具合が悪いそうだよ。このバターの壺と、《ガレット》を1つ、持っていってあげて」~
 この後、可愛い赤ずきんちゃんは狼に食べられるという怖い童話だが、フランスの童話作家シャルル・ペローがフランスのみならず、スウェーデン、ベルギーなど各地の民間に伝わる話を「悪い奴には気を付けなさい」という教訓として書いたものだ。ただし民話の場合は〝女の子〟だけであったが、ペローはインパクトのある〝赤頭巾〟の女の子にした。これによって女の子はより可愛いらしくなっただけに、食べられてしまうという残酷さを印象付けた。これが作家としてのペローの工夫だ。
  
  ところで、ソバリエとしては赤ずきんちゃんが持参したガレットというのが気になる。われわれは蕎麦粉だと思うが、小麦粉でも作るらしい。 だから、原文の《galette》を岩波文庫版『ペロー童話集』の「赤ずきんちゃん」は《ガレット》としてあるが、岩波書店の子供向けの『ペロー童話集』「赤ずきんちゃん」では《パン・ケーキ》と訳してある。またペローから約100年後のグリム(ドイツ)も同じく「赤ずきん」を書いたが、 岩波文庫版『グリム童話集』の「赤ずきん」は《お菓子》と訳してしてある。

  「米粒×水」の国である日本の民話だったらご飯類の《おにぎり》か《おむすび》になるところであろうが、「粉×火」のクニであるヨーロッパの民話では穀物の粉を焼いた物が登場するわけだ。
 で、赤ずきんちゃんの《galette》はどういうものだったのか? と疑問は残るが、世界には必ず物好きな人がいる。誰かが研究しているだろう。

『世界蕎麦文学全集』
41.ペロー「赤ずきんちゃん」
* グリム「赤ずきん」

 

文  江戸ソバリエ認定委員長 ほし☆ひかる
絵 ポプラ社の絵本より