第708話『新・みんなの蕎麦文化入門』を上梓してⅡ

      2021/04/23  

☆日本文化とアメリカのシステム

 ソバリエの黒岩さんなど流通や販売に詳しい人は拙著を本屋さんで購入してくれた。理由は「本屋さんで買わないと宣伝にならないし、出版社の利益にならないでしょう」ということだった。本屋さんの場合、店員さんが売れ筋商品を肌で感じて「今、売れている本」を認識してくれるから好ましい。もちろん出版社への直接注文も出版社が売行きを肌で受取ってくれるからいいというわけである。温度感のある消費行動・・・、賢い消費者だ。

 話は代わるが、過日、自分の住むマンションで通販のA社事件というのが起きた。何かというと、当マンションの住所は1-2-3(仮)なのに、間違って3-2-1宛ての大きな荷物が届いたのである。いつまで置きっぱなしだったから管理人さんが荷物を確認したところ誤送ということが判明した。管理人さんはA社に電話した。と書くと簡単なようだが、どこに電話してもいいかも分からず大変だったらしい。やっと辿り着いたら、アッサリと「それは誤送だからそちらで処分しくれ」と言われたという。要するに配送システムは完備しているが、返却システムは無駄だからつくっていないというわけであり、またこうした誤送による損失も計算に十分入っているから会社としては何の問題もないということらしい。
  「A社の従業員でもない私が何で従わなければならないか」と頭にきた管理人さんは「A社の通販で買わないで」とマンション住民にアナウンスした。

 要は、アメリカの合理主義システムが日本人の管理人さんの気持を逆撫でした例であるが、困ったことに経済界ではこの合理主義がビジネスモデルとしてもてはやされていることである。

☆コロナ禍

 日本のコロナ対応は失敗したと、みなさん感じているだろう。
  一つの指標として、中国のコロナによる死者数は5000人、韓国は2000人にとどまり、台湾にいたってはほどんどないというほど、沈静・収束している。
  だというのに、日本の死者は約1万人にせまり、まだ沈静化を見せていない。
  そもそも病というのは【早期発見早期治療】にかぎる。であるのにコロナ対応では、①水際対策(予防)は甘い、②発見すべき検査体制がない、③治療に必要なベッドもスタッフもいない、ワクチンもない。
   加えて、誰が見てもコロナは医療問題であるのに、医療の専門家でもない政治家(政府、各知事)が政治利用したからである。だから彼らが言うのは「皆さん自身が注意してほしい!」を昨年2月からずっと連発してきただけ。

 このコロナ問題からも、日本の錆が見えてきた。
   なぜ錆ついたのか?
   GDP順位を見ると、1位アメリカ、2位中国、3位日本、4位ドイツ、5位イギリス、6位インド・・・であることはご承知のとおりである。  しかし、2009年まで日本は世界2位であった。それが2010年に中国に抜かれ3位になった。それでも2010年当時は僅差だったが、10年経つと大差がついていた。
  2位、3位などの順番などたいしてことではないというわけにはいかない。自由民主主義の国家が1位、2位を占めていた世紀は世界経済は自由民主主義のルールで動いていた。しかし1位アメリカ、2位中国となるとそうはいっていられなくなることは現在のギクシャクした世界情勢からわかるだろう。ましてや1位、2位が逆転してしまうと、世界は何に支配されるか、これも想像できるだろう。
   こうなった責任は日本にある。そこに政治家・経済人・マスコミ、そして国民は気づかなければならない。

 小著の「あとがき」には、アメリカ禍と中国禍の焦燥を自分の思いとして込めてみた。われわれはどうすればいいのか、と。
   加えて、上梓後に見えてきたことがある。それが冒頭の黒岩さんの消費行動である。彼は自分の好きな蕎麦の本を求めるにあたって、本屋さんを、出版社を、小生を応援する方法とった。
   少し前にモデルの富永愛さんが「消費は応援でなければならない」と言っていたが、まさにそのとおりだと思った。

江戸ソバリエ認定委員長 ほし☆ひかる