第744話 北池袋長寿庵のウラウラメニュー

     

 過去を語り、未来を創る 

   今日は嬉しかった。
 北池袋長寿庵(江戸ソバリエの店)へ、ソバリエの北川さんと内藤さんと一ノ瀬さんとで行こうということになり、伺ってびっくりした。
  飯高さんが対馬の《いりやき》と《いりやき蕎麦》を用意してるという。
  もう何年か前に対馬に行ったとき食べたもので、拙著の『新・みんなの蕎麦文化入門』でも紹介した蕎麦だった。
 その著書で述べているように、《いりやき》は対馬鶏で出汁を取る。そのために飯高さんは、対馬地鶏を九州から取り寄せた。対馬地鶏は、写真のようにの喉の箇所に肉垂がない。大陸系の鶏だからである。
  作り方は、その対馬地鶏屋さんから教えてもらったというが、鶏出汁に野菜など入れた鍋物である。これを《いりやき》といい、〆に蕎麦を入れて食べるのが対馬流の《いりやき蕎麦》。もちろん当店のお品書きにはない、裏の裏の一品である。
  さっそく一口味わうと、ほんとうに優しい気持の味がした。
  飯高さんは、拙著を読んで、大陸からの栽培蕎麦伝来地=対馬を体感したかっとおっしゃった。
  「分かる」と私は思った。
  よく、未来を考えるために過去や歴史を見ると言うが、かつて私も『江戸名所図会 ー 深大寺蕎麦』の歴史的絵を再現してから、かえって未来の蕎麦界が気になるようになった。だから、若い飯高さんが、過去を体感すれば、必ず未来を拓くことができると思う。  
  そして同時に嬉しかった。
  著書というのは、一人でもいい、ある人のために書くということもある。飯高さんだけでもこのような体験をされたことで、ほんとうに上梓してよかったと感激しながら、箸をすすめた。

〔江戸ソバリエ認定委員長 ほし☆ひかる〕

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