健康ニュース 2月15日号 善し悪しの判断力を!

     

 仕事柄、有料無料を問わず一日に百件近いメールによる情報が届きます。

そんな中、次のメール内容には驚きました。睡眠と食に関する内容で、講師が次のように語っています。

( )内は小子の感想です。

 「江戸時代の野菜は有機栽培でした(化学肥料や今で言う農薬などない時代ですから当然です)。今日のような流通網もなく、収穫後の野菜が(消費者に)直売されていたので、栄養素も失われていません。現代では収穫後、概ねJA(農協)→流通センター→スーパー店頭というシステムになっています。収穫後何日経っているでしょうか?栄養価は昔に比べて当然減っていますよ」

 そこでメール発信元へ質問をしました。

 「江戸時代の野菜の栄養価がどうして分かるのでしょうか?何か資料でもあるのでしょうか?野菜の栄養価表示は、収穫時?流通段階?店頭にあるもの?どの段階で分析されているのですか?先生が発言されている根拠を教えてください」

 2,3日後に届いた回答は以下の通りです。

「収穫から時間が経過するほど、野菜の栄養価が落ちていくのは周知の事実となっており、また、〈昔の野菜〉と〈今の野菜〉の栄養価の比較については、

日本食品標準成分表の1950年の初訂版と2015年の7訂版を根拠としております。その栄養価がどの段階での野菜なのかは、日本の野菜の平均値ということですので、明らかになっておりません」

 さらに厚生労働省発表の関連ホームページまで付記してくれていました。

 小子の何年も前の調査結果を書いてみます。

 日本で最も古い食品分析は、明治時代に行われていますが、項目数に関しては全く参考になりません。分析されているのは3大栄養素とエネルギーぐらいです。何故ならビタミンや多くのミネラルはまだ発見されていません。

 数多の食材を分析し、現代に近い栄養項目数を調査した最古の物は、1950年(昭和25年)発行の物です。

「昔の野菜に比べて今の野菜の栄養価は減っている」という説は、完全にデマであり都市伝説であり、この説を流布することによりメリットのある業者があたかも真実のように言い広めているということを知っておきましょう。

冒頭の江戸時代の野菜に比べて云々は、江戸時代に収穫された野菜の栄養素数値はありえない故、論ずることすら無意味です。

また流通については、現代の冷蔵や冷凍技術を、運送システムを無視した論と言えましょう。

 さらに重要なことは、質問に対して回答者が、1950年(昭和25年)発行の日本食品標準成分表と対比することを勧めていることです。

 何年も前に国立図書館で、1950年発行の食品標準成分表は、保存状態が悪く貸し出しは不可能とのことでコピーをしてもらい保存しています。

 その時の資料と直近の食品標準成分表をもって、いくつかの野菜の栄養素を比較した結果、目立つほどに減っているという野菜はありませんでした。若干減っているものもありますが、逆に増えているものもあります。

 また文部科学省の関連ホームページには、過去の食品分析数値と最新の成分表の数値比較は意味がない故、適当ではないと書いてあります。何故なら、時代に応じた最新の分析法を採用している、成分の定義、供試した試料の性状などが異なっていることを上げています。

 それでもまだ昔に比べて栄養素が減っていると思いますか!