キリン「植物大量増殖技術でホップの大量増殖に成功」
執筆者:motoe
キリンホールディングス(社長:磯崎功典)のキリン中央研究所(所長:矢島宏昭)は、独自の「植物大量増殖技術」を活用し、ホップの腋芽形成を促す世界初のアプローチで、ホップの苗を50倍以上に大量増殖させることに成功。また、植物の成長を制御している「ジベレリン」と「サイトカイニン」を組み合わせて付与することで、増殖効率を2倍以上増やす新技術も確立し、その研究成果が「Plants」の4月号に論文掲載された。ホップ産業は、ビールの原材料となる毬花の収穫が夏季のみであること、加えて気候や栽培条件に左右されやすく、栽培が難しい植物であることから、生産農家の減少が問題になっており、ホップ生産を持続的に行うためには、栽培の容易さや、収量の多さ、個性的な香味などの特徴を持ち、高品質で収益性の高いホップを育てる必要があった。その一方で、新品種の特性評価にも多くの試験用苗を必要とすることから、効率のよいホップ苗の増殖技術が期待されている。同社では、長年の植物研究の知見から、じゃがいもなどを大量増殖させる「植物大量増殖技術」を開発してきたが、今回は、この技術を応用してホップの腋芽形成を50倍以上に促進させ、新たな苗を大量増殖させる技術を確立。腋芽は植物の茎と葉の間に作られる芽であり、成長すると新たな苗のもととなるため、植物の大量増殖において腋芽形成は重要なステップとなるが、この腋芽形成を活用したホップの増殖技術の開発は世界初となる。さらに、植物の成長を制御する「ジベレリン」と「サイトカイニン」を付与することで、増殖効率をさらに2倍以上高める新技術も確立した。ホップ増殖研究は、これまで様々な研究機関でも試みられてきたが、特定品種での増殖に留まっているのが現状。今回当社が発見した増殖技術は、汎用性高く、さまざまなホップへの応用が期待されるものであり、現在当社では、同技術を利用して作製したホップ苗の実証栽培に向けた準備を開始しているという。