キリン「ヘルスリテラシーと健康状態の関連」結果公開

      執筆者:shirai

キリンビバレッジと日立社会情報サービスは、2021年11月より実施した、ヘルスリテラシーと健康状態の関連に関するデータ分析の実証実験について、結果を公開した。健康経営については、社会的関心が高まる一方、施策の効果検証やPDCAサイクル実行の難しさが課題となっている。また経済産業省の資料によると、従業員の健康リスクと労働生産性損失には関連があり、低リスク層と比較して高リスク層では2.9倍の労働生産性損失があると推定されている。そこで両社は、経営課題やその課題解決に繋がる健康課題、その対策までを適切なPDCAサイクルの下で実践できるよう支援するための“データドリブンな健康経営サービス”確立に向けた実証実験を実施した。実証実験の成果、アンケートデータ(健康意識・ヘルスリテラシー)と従業員の健診データ(健康状態)を分析し、健康施策提供者がもつバイアスの存在を可視化したことで、健康施策実施に関する2つの重要なポイントを確認した。これにより、事実に基づいた「健康経営のためのより良い施策立案」に役立てることができると考えられる。(1)健康経営施策として従業員の健康的な生活習慣支援を継続することの重要性 従来、健康意識が高く健康施策に参加する人は、実際の健康状態も良い傾向にあると考えられていたが、今回の実証実験のアンケートデータにて「健康意識が高く、健康施策の継続性・即効性も重視する」グループが、健診データにおいて「中性脂肪の基準値超えの割合が最も高い」という結果が分かった。これは、2020年度の健康診断の結果が芳しくなかった人が健康意識の変化を起こしたものの、新型コロナウイルス感染拡大に伴う運動不足などで生活習慣などの行動変化がなかったことが要因とみている。このことから、健康経営施策として従業員の健康的な生活習慣支援を継続していくことの重要性が分かった。(2)多様なテーマとターゲット設定で健康施策を提供し続けることの有益性 従来、健康セミナーなどの任意参加型の健康施策は、健康状態が良好な従業員が多く参加する傾向にあると考えられていたが、今回の実証実験では、健康セミナー参加者の健康状態には特に傾向が見られず、さまざまな健康状態の従業員が参加していることが分かった。このことから、多様なテーマ設定とテーマごとのターゲット設定(年代など)を行い、幅広い従業員が参加できる健康施策の機会を提供し続けることは有益であることが伺える。今回の実証実験では、健診データ、アンケートデータ、施策参加データを分析対象とした。今後は、健康経営支援サービス「KIRIN naturals」効果分析をメインに、対象データの拡張およびワークエンゲージメントやストレスチェック、労働時間などのデータセットを含め継続的な経年分析を行うことで、「健康と労働生産性」の因果関係についても可視化をめざし、より効果的な健康施策の実施につなげていく。また、今回の実証実験の結果を踏まえた両社共催のセミナーを、2022年秋ごろに実施する予定。 さらに、将来的には、「KIRIN naturals」導入ユーザーへのオプションサービスの創出・展開、データドリブンな健康経営サービスの立ち上げならびにキリンビバレッジ・日立グループが展開しているサービスへの活用をめざす。<実証実験の概要>(1)目的:従業員の健診データ(健康状態)とアンケートデータ(健康意識・ヘルスリテラシー)、施策 参加データを分析することで、健康経営のPDCAサイクルの構築をめざす。また、アンケート データ(健康意識・ヘルスリテラシー)に基づき属性分類することで、健康意識や価値観による健康状態や施策参加状況の違いを検証する。(2)実施期間:2021年11月~2022年3月 (3)対象者:日立社会情報サービスの従業員 2,295人(男性:1,841人、女性454人) (4)実験方法: a.健診データは、2020年度のデータを完全匿名化して活用。 b.アンケートデータは、「KIRIN naturals」に登録したユーザーが回答。回答結果より属性分類を実施。 c.施策参加データは、「KIRIN naturals」が2021年度に実施した健康セミナーへの参加データを活用。 上記データセットを突き合わせ、健診結果(a)とアンケートデータ(b)・施策参加データ(c)の相関関係を分析した。