健康ニュース 12月15日号 エイジズムとは!?

     

 介護の仕事をしている方を取材した時の話です。

「おばあちゃん、点滴を始めますから準備をしてくださいね」と穏やかに言う看護師さんの言葉を無視するかのようにTVを見続ける高齢のご婦人。

看護師さんが少し強い口調で再度言うと「あんたはワシの孫か!おばあちゃんと言えるのは孫だけじゃ。名前もベッドに書いてある。名前で呼んでくれ!」とご婦人は言ったそうです。

この高齢ご婦人の取った行動を、あなたはどう思われますか?

今、知る人ぞ知るという状況にあるのが「エイジズム」という言葉です。19  69年にアメリカ国立老化研究所初代所長のロバート・パトラー氏は、差別用語の一つとしてエイジズムを提唱しました。以来半世紀を経てわが国でもやっと定着しそうな単語と言えるかも知れません。

 その趣旨の一つに「歳を取っているという理由で高齢者を組織的な一つの言い方にはめて差別すること」とあります。

 今、レイシズム(人種差別)、セクシズム(性差別)と並び三大差別と言われていることを理解している方はまだ少数派です。

 評論家の中にはエイジズム例として、介護施設、特にデイサービス施設などが、「おじいさんをお預かりします」などと言っているケースを取り上げています。これは高齢者を自立した大人として見ていないから出る声だ、と言っている方もいます。

 もちろん、このような社会の動きにいち早く対応していると思われるケースもあります。

 一部のデイサービス事業者では、託老所という表示を止め宅老所と改めているとのことです。自宅の延長と考えておけば無難という発想かも知れません。これは託老所が託児所を連想させる用語であるからかも知れません。

 この動きに関連しているかも知れませんが、業者も「高齢者を預かる」という言い方から「ご案内する」「ご一緒する」「お連れする」という言い方に変えているケースも多くなっているとのことです。 

鳥羽美香文京学院大学教授(社会福祉学博士)は、同大学の研究紀要(Ⅴol・7)でご自身の体験として大意次のように書いてあります。

 「デイサービスセンターに勤務していた時、利用者を〇◎ちゃんとか▽▼ちゃんと苗字でなく名前で呼んでいる職員がいた。理由を質すと、可愛いから親しみを込めて呼んでいるとのこと。利用者を大人として接しようと職員同士で再認識しこの習慣はなくなった。この発想はエイジズムそのものでした」

 さらに「デイサービスでTVを見る時は、水戸黄門や大岡越前などにチャンネルを合わせていることが多い。これも高齢者は時代劇、それも勧善懲悪物が好きという固定観念でエイジズムそのものです」と述べています。

 「色々思いつくことが多いのは、私に対するエイジズムだ!」と考える方もおられるかもしれません。

 福祉や医療関係だけでなく日常生活でも溢れていると思いませんか?

 しかし好意的なエイジズムもありそうです。

 「おばあちゃん、刺身サービスしとくから買ってよ!」などは親しみある言い方ではないでしょうか。

 古来、ちゃん付で呼ぶいい方は、さん付よりも親しみある言い方として定着しています。さん付けはビジネスライクで距離感があるという説もあります。 

 そういえば、大阪出張時、電車内で咳き込んでいると見ず知らずのおばちゃんが「飴ちゃん舐めるか?」と飴玉をくれたことがありました!