健康ニュース 3月15日号 乳酸菌100億個とは
健康講演後の質問時間で、次のような発言がありました。
「野菜嫌いな父が、お腹の調子が今一つなので、CMで知名度の高い青汁を飲んでみたいと言っているのです。先生のお考えをお聞かせください」
「どのような理由でそのCMの商品を選ばれたのでしょうか?」と質問をしたところ、「乳酸菌が100億個配合というCMに関心があるみたいです」ということでした。
「あのCMは何度も見たことがあります。誰だって100億個配合というと凄い量だと思ってしまいますよね。でも100億個は腸内細菌の世界ではどれぐらいの比重なのでしょうか?誰も計算した方はいないようですが、あのCMを見た時にやったことがありますのでお聴きください」
「腸内細菌の数は、10兆~1000兆個と諸説ありますので間をとって仮に500兆個とします。そのうち善玉菌(バランス調整菌)は2割が理想と多くの研究者が言っています。500兆個の2割は100兆個ですね。あり得ないことですが乳酸菌が皆無と仮定した場合、お父さまが飲んでみたいという製品は乳酸菌100億個配合と言っていますので、それは100兆個の1万分の1に過ぎないのではないでしょうか?
割合として多いか少ないかの判断はお任せします。しかも善玉菌と言っているものには、ビフィズス菌と乳酸菌があり、その割合はビフィズス菌が99%、乳酸菌が1%という説が有力です。もし乳酸菌を摂りたいならヨーグルトや味噌などの発酵食品を多めに食べることをお薦めします。飲むな!とか飲んでも無駄!とは言いませんが、100億個という数字で判断するのならば少し考え直した方が良いかもしれませんね。それに、野菜ジュース的なものを飲んだからといって、野菜を摂っているのだという考えはいかがなものでしょうか」
質問者がどう理解したかはわかりませんが、頷いていたのは間違いありません。
野菜ジュースや青汁は食生活の中で、野菜の代用品となるのでしょうか?
多くの栄養関係の専門家は「野菜ジュースや青汁を飲んでも野菜摂取の代わりにはならない」と言っておりますが、「エネルギー補助、微量栄養素補給などの目的で飲むならば良いでしょう」とも言っております。また別の管理栄養士は次のように述べています。
「食生活が乱れている時、体調のすぐれない時、疲労感のある時、小腹が空いた時などは、野菜ジュースはお薦めです。何故なら糖分の摂取に適していますし、吸収も早いからです。青汁には野菜ジュースと比べて糖分が少ないようですから、糖質制限をしている方には合っているといえます。従って自分の体の状態と、何を目的で飲むのか理解したうえで選択するのが良いのではないでしょうか」
何れにせよ、日々の食事で野菜摂取が少し足りないなぁと思った時は、野菜ジュースとか青汁でもって補うことに異論を述べる専門家はいないようです。健康維持のサポート食品として、手ごろなサプリメントとして今後も市場がどんどん大きくなっていくことでしょう。
そんな環境下で、特定の栄養成分のみを強調する有り方、しかも特定の腸内細菌数のみで判断するのは好ましくないと言えるのではないでしょうか。もちろん業者サイドでは、菌数のみの強調ではない!と言われることは理解しているつもりですが・・・。
天候不順や経済環境が変わり円高などになった際、野菜などの価格が高騰することが多々あります。そんな時期、「野菜不足を補うための野菜ジュースや青汁をうまく使ったレシピ集などが、ネットを通して静かに浸透している」というニュースが届いたことがあります。誰もが、「健康に野菜は欠かせない」という認識を持っていることは間違いないと言えます。 近 竹将