健康ニュース 4月15日号 野菜栄養素の今と昔
2023/05/06
ある展示会で、久しぶりに〇◎医学博士が開発した関連商品のコーナーに立ち寄りました。その〇◎博士が開発したサプリメントは、新鮮な野菜を基に作り上げた酵素ということで、この酵素が新発売された時のメディアでの広告の謳い文句は次の通りでした。
「食事から酵素をたくさん摂るためには、肥えた土地で、化学肥料を使わずに育てられたものを収穫してすぐに食べることです。新鮮なものが美味しいのは酵素がいっぱい詰まっているからです。しかし、近年生産される野菜や果物は、農薬や化学肥料の影響で栄養素が大幅に減ってきていると言われています」(平成25年読売新聞の全面広告より引用)
読者の皆様は、この謳い文句のどの部分に疑問をお持ちになりますか?
最も指摘したい点は、最後の部分の「栄養素が大幅に減ってきていると言われています」という部分です。
これほど自信をもって、大手新聞の全面広告に掲載しながら、ご自身では野菜や果物の栄養素値を分析していないということが読み取れます。
実験でデータを出さないで、どのような根拠の下で、何に比べて酵素がいっぱいだと言っておられるのでしょうか?
この質問には、当時はもちろん、今回もお答えは得られませんでした。
今回展示会で「〇◎先生は最近講演をなされていないのですか?」と質問したところ、予期していない返事が返ってきました。
「先生も80歳を過ぎていますから・・・。もうお年ですからね」
小子は心の中で「私も講演を控えめにしなくちゃならないのかなぁ・・・」とつぶやいていました。
二つ目の疑問点は次のことです。
「収穫したばかりの野菜だけが、酵素がいっぱいと言うのならば、このサプリメントの製造工場は畑の近くにあるのですか?でないとしたならば、畑から工場に運搬されている間に酵素はどんどん減っているのではないですか?だとしたら八百屋で買う野菜と同じではないでしょうか?」
もちろんこの質問にも前回同様今回も回答らしきものはありませんでした。
別の業者ですが、「今の野菜は江戸時代の野菜に比べて大幅に栄養素が減っています。江戸時代はいわば産地直送で、畑で採れた野菜はすぐ小売店に並び消費者の下に届きました。現代のように、産地→農協などが集荷→スーパーなど小売店→消費者へ、と収穫から消費者に届くまでの時間は、栄養素をどんどん減らしていることは周知の事実です」
小子の質問「①江戸時代の野菜の栄養数値はどうやって分かったのですか?②また今の流通システム、野菜などの冷蔵保存運搬などをどうお考えですか?」
業者の①に対する答えは、「分析値が残っていなくても考えただけで分かるでしょう。一番古い食品栄養分析書と最新の食品栄養分析書を調べたら分かりますよ」と言葉荒げに言われました。②に対してはノーコメントでした。
最新の食品栄養分析書には、過去と現代の野菜などの栄養素を比較して、特定の栄養素が減ったとか増えたとかを論ずることの無意味さが書かれています。何故なら、分析機械は日進月歩進歩していますし、分析に使用する試薬もどんどん新しいものが出回っているという理由があるからです。先述の業者は、そういう意味のことが書かれている最新の食品分析書を見ておられなかったのでしょうか・・・。
「〇◎医学博士の開発した商品だから」「無農薬だから」
「生産地直送だから」と言った宣伝文句は、一呼吸おいて考える習慣を身に着けたいものです。末筆ながら、「無農薬野菜」という表示は農水省では認めていません。正しくは「特殊栽培農産物」と表示しなくてはなりませんので注意しましょう。