健康ニュース 7月15日号 誤嚥性肺炎を理解しよう

     

 日本人の死亡原因を調べている時に気づいたことがあります。疾患別死亡原因のトップ3は、①がん②心疾患③脳血管疾患が長く続いていましたが、2011年(平成23年)には3位に肺炎が脳血管疾患と入れ替わっています。これは高齢化社会が到来したことで、肺炎で亡くなる高齢者が急増したことによるものと言われていました。

 しかし2017年(平成29年)には、肺炎死亡者数は5位となっています。これは肺炎で亡くなる方の比率が下がったのではなく、肺炎と誤嚥性肺炎を分けたためです。

 高齢者肺炎の多くは、誤嚥と言われており、その根拠として、70歳代では70%以上が、90歳以上では95%以上が誤嚥性肺炎であるというデータが発表されています。

 誤嚥性肺炎の引き金となるのは、食べ物や唾液などが誤って気道内に入ってしまう誤嚥が原因で発症する肺炎のことですが、多くの方が飲食中に起こると考えておられるようです。専門家の誤嚥に対する見解は、飲食物の嚥下中だけでなく、咀嚼中や食べ終わって時間が経過してからも、また就眠中にも発生するということです。それぞれ嚥下前誤嚥、嚥下中誤嚥、嚥下後誤嚥と言っています。

 ではどのような方が誤嚥性肺炎になる可能性が高いのでしょうか。

 脳血管疾患(脳梗塞など)やアルツハイマーなどの認知症、パーキンソン病などの基礎疾患のある方はもちろんのこと、一見健康に見える高齢者でも口腔衛生環境の悪い方、例えば口腔内が乾燥している方、歯の噛み合わせ異常や義歯の状態が不適合な方、喉の筋肉の衰えた方などは特に注意することが必要です。

 中には、「誤嚥しても肺炎になりにくいように、口腔ケアを徹底して、口中に細菌を減らすことが重要なポイントです。食後の歯磨きは口腔内を清潔にすることと、口腔内を刺激して嚥下能力を改善します」と言っておられる専門家もいます。

 誤嚥のリスクを下げるには

*食事に集中すること(テレビを見ながらの食事や会話をしながらの食事を避けること)*食後、胃液の逆流を防ぐため2~3時間は横にならないこと*ゆっくりと飲食すること*嚥下リハビリをすることなどが挙げられています。

 日頃から手軽に自分の嚥下機能がどの程度かチェックできないのかについて考えていました。医療機関に行かなくても手軽にチェックできるという条件で探してみた結果、「100WST」という検査方法があることを知りました。この検査方法は簡便で安全かつコストがかからないというメリットの多いもので、長崎県は山部歯科医院の長崎嚥下リハビリテーション研究会事務局が公表されている方法で数多の臨床結果も発表されています。

 その検査方法とは・・・

*椅子に座った状態で100㎖の水の入ったグラス(またはコップ)を手に持ちます。グラスに唇が付いた状態で保持してもらい、検査者のスタートの合図でストップウォッチを押します。その際、「できるだけ早く飲んでください」と指示します。また飲水後1分以内に咳や湿性しわがれ声が出た場合もムセとみなします。

嚥下時間は、スタートから終了までに要した時間です。

 飲む際、ムセた人は専門医の診断を受けましょう。ムセなく10秒以下で飲めた人は健常者です。嚥下時間に11秒~14秒要した人は要観察です。嚥下時間に15秒以上要した人は要精査です。

 嚥下機能の低下は、低栄養と結びつき最終的にはフレイルという結果になりかねません。血圧を気にして食生活に注意している方は多くおられます。同様に嚥下にも十分気を付けたいものです。自分の嚥下能力がどういう状態かを知っておくことは健康長寿には必要条件です!