キリン「ペットボトルに直接印刷できるRDP技術」開発
執筆者:motoe
キリンホールディングス(社長:磯崎功典)のパッケージイノベーション研究所(所長:岡久正俊)は、ペットボトルに直接印刷できるリサイクル対応ペットボトル ダイレクト印刷技術(Recyclable Direct PET bottle Printing technology、以下RDP技術)を開発し、PETボトルリサイクル推進協議会に申請した。ペットボトルのラベルは、ブランドを訴求するとともに、商品として販売する際の製造者情報や賞味期限、原材料など定められた表示のために必要なものだが、使用済みペットボトルを回収してペットボトルに再生する「ボトルtoボトル」を推進するためには、ラベルを分別して回収をする必要となる。特に駅や商業施設など家庭以外から回収されるペットボトルは、分別する手間や回収の負担からラベルが分別されない場合が多く、ペットボトルの資源循環の課題となっているのが現状。そこで、“プラスチックが循環し続ける社会”の実現に向けて、必要な表示は残しながら、ラベルやシールに使うプラスチックを削減し、同時に消費者がラベルを分別する負担も軽減する技術として、日本ではまだ実用化されていないRDP技術の開発しに至ったという。従来のインクでペットボトルに直接印刷した場合、リサイクル工程でインクが剥がれず、リサイクル後のPET樹脂へ着色が残ったり、透明性や品質が損なわれる恐れがあり、そのため、PETボトルリサイクル推進協議会の定めるガイドラインでは、直接印刷を禁止されており、この技術課題に対して、同社のパッケージイノベーション研究所は、富士フイルムが開発した剥離インクを使用し、そのインクをリサイクル工程で剥離できる技術を開発。この技術により、RDP技術で印刷した表示やバーコードなどは、消費者の飲用時には剥がれず、リサイクル工程の洗浄時に剥がれ、分離させることに成功したという。このRDP技術では、当社独自の「デジタル印刷技術」を採用しており、従来のラベル印刷に必要な製版が不要。これにより、ペットボトル一本ごとに個別のデザインの印刷もでき、多様なニーズに対応が可能。またペットボトルに直接印刷できるため、これまでのラベルに比べて、基材となる樹脂フィルムが不要となり、ペットボトル一本当たりのプラスチック使用量は約8%、ラベルの使用によるGHG排出量のうち約84%の削減が可能となる。高度なデジタル印刷技術により、原材料表記やバーコードのような微細な印刷も可能で、ペットボトルの透明感も損なわれず、フルカラーで視認性やデザイン性に優れた表現も可能だ。キリングループは、環境負荷軽減の取り組みの一環として、「キリングループプラスチックポリシー」を策定し、ペットボトルの資源循環の推進やワンウェイプラスチックの削減、ペットボトル原料の持続性向上を目指しているが、同社は、このRDP技術を自社利用に留めず、ライセンスアウトなどの手段も含めて広く展開していくことで、“プラスチックが循環し続ける社会“の早期実現を目指したいとしている。