第252話 翡翠色の蕎麦

     

【挿絵☆ほし】

お国そば物語⑲


塩尻でそばサミット(主催信州塩尻「そば切り物語り」実行委員会・NPO法人信州そばアカデミー)が開催された(平成26年9月13日)。
プログラムを見ると、江戸ソバリエ・ルシック講師の林久喜先生(筑波大教授)がコーディネートされるデイスカッションもあるし、武蔵の国の蕎麦打ち名人戦でお世話になる小川伊七さん(元埼玉県杉戸町町長)や主催者の赤羽章司さんたちもご登板される。それに噂の「信州ひすいそば」開発の話もあるというから、これは行かねばならないと思った。

☆信州ひすいそば
ブランド蕎麦として有名なのは茨城の「常陸秋そば」であるが、あらたに長野県野菜花き試験場が新品種を育成した。それが「信州ひすいそば」である。
発表された長野県農政部の荒井一哉さんによると、「関東1号」×「信濃1号」の交配組合せで、平成14年から23年までの10年間かけて育成したという。
育成した所は塩尻市だが、その理由がふるっている。市内平出遺跡の5世紀前半の住居跡から、蕎麦の花粉2点が発見されたからだという。中国大陸から伝来した蕎麦も、古墳時代には信濃国まで到達していたということであろう。
当初は定石通り、耐倒伏性、千粒重を目指してクリアしたが、結果的には丸抜の色調が優れていることを発見し、これを特色とすることにした。
たしかに今までは、上品な白い蕎麦、野性的な黒っぽい蕎麦という見方が主流であって、江戸蕎麦ファンは「白」に軍配を上げていた。
それでも、時折遭遇する早刈りの緑色に、われわれは魅かれるところがあったが、憎いことにその点を前面に押し出しての「ひすい」だという。命名者は信州おいしいふーど大使の玉村豊男さん
この新ブランドはまだ少量の試食しかしたことがないが、昔からの在来種に、新しいブランドの参入は、美味しい蕎麦が大好きな者にとって大歓迎である。

常陸秋そば=茨城県農業試験場が、県内の在来種を集めて昭和53年から3年かけて品種選抜をして誕生したブランド蕎麦。

参考:お国そば物語シリーズ(第252、238、211、167、128、124、121、120、119、118、89、66、48、44、42、24、9、7話)、

〔江戸ソバリエ認定委員長 ☆ ほしひかる