第925話 ご飯が好き

     

~ 食味審査から ~

 友人の三紀さんから、時々依頼されている官能テストに参加した。
 この日のテストは「ご飯」だった。
 日本人にとってご飯は「主食」と呼ばれるほど欠かせない存在だが、そのご飯の炊き方は弥生時代に開発された。つまり、弥生土器に米と水を入れて焚火で炊く。この時代はの米は《熱帯ジャポニカ》だったといわれている。
 ところが、古墳時代になると地球は寒冷期に入ったらしい。そうすると、日本の米は寒冷期に合った《温帯ジャポニカ》にかわっていった。当然、ご飯の炊き方も変わった。つまり竈で甑を使って蒸す法に改革され、今に続く。

 この米の変化の時期に別の視点から、私は関心をもっている。
 それは「米」のよみ方である。「米」は訓では「ヨネ」「コメ」というが、いまは「コメ」というのが一般的である。一方の「ヨネ」は地名・姓名に多い。すなわち米山、米田、米村・・・、である。私は、現在一般的なコメが新しく、ヨネは古い詠み方ではないかと思っている。もしこれが正しいとしたら、変化の時期はいつかということになるが、《熱帯ジャポニカ》と《温帯ジャポニカ》の交代に伴う可能性もあるのではなかろろうか。

 さて、テスト室に入ると、テーブルには五種類のご飯がブラインドで並び、つや、香り、味、粘り、硬さがどうかをチェックすることになっていた。しかし五種類もあると混乱して、なかなか難しい。
 以前にもテストの経験をしたことがあるが、そのときは、もっちりか、あっさりか。あるいはしっかりか、やわらかかというもので、これはやりやすかった。
 いずにしろ、ご飯の評価基準はこの二件の基準に集約されるだろう。
 でも、いつも言うように、評価基準というのは、男女、年齢、出身地で変わってくるし、時代によっても変わるだろう。
 それでも日本人は2000年間、お米が大好きである。

 

江戸ソバリエ
ほし☆ひかる

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