第945話 鴨のご縁

     

Ⅰ.はじめに
*鶏肉より鴨肉
 私は鶏肉があまり好きでないから、雉肉や鴨肉に興味をもっています。
 だから、蕎麦屋では《鴨なんばん》や《鴨せいろ》をよく食べます。

*高田在子著『あつあつ鴨南蛮そばと桜餅』
 『蕎麦春秋』に連載している「そば文学紀行」では、ソバリエで時代小説作家の高田在子さんが『あつあつ鴨南蛮そばと桜餅』を上梓されたので、小説のご紹介を兼ねて江戸時代の鴨肉の流通、つまり将軍家と御三家の鴨狩猟日本橋の鴨問屋について書いたことがあります。

1月9日、麺業界の新年会
 ホテルオータニで麺業界の新年会開催されたとき、同じテーブルに鴨専門製造メーカー大平産業の方と一緒でした。なので新年会の席で二人は鴨談義を続けていました。

*2月5日、明治座講演会
 明治座で江戸ソバリエの仲間と講演会をしたときにも大平産業の会社の方が来ていただき、会社のHPにもご報告してもらいました。

*6月6日、浜町「かねこ」
 そこでお返しというわけではないですが、少しでも「第四の食肉」といわれている合鴨の普及にお役に立てればということで、江戸ソバリエの江戸(旧:寺方)蕎麦研究会で「合鴨」のお話をいただくことにしました。
 その打ち合わせを浜町「かねこ」で昼食をとりながらさせていただきました。同店は大平産業のお得意様らしく、彼から、ここで会いましょうという提案でした。注文はというと、お昼は残念ながら鴨はやってないとのこと。じゃあというわけで、《天ざる》」にしましたが、店主の金子さんは←神楽坂「蕎楽亭」←猿楽町「松翁」という子弟関係らしいので、天麩羅は見事でした。
 それよりも、もっと驚いたのは店主の記憶力です。
 当店は、親友が連れて来てくれた店でした。2回目は朝日カルチャーの人と2階席でした。初回のときはツケ台(カウンター席)に親友と並んで座って食べたことを覚えていましたが、今日は和田さんが紹介してくれたので、改めてご挨拶すると、「前はここにお座りでしたよね」と店主がツケ台を指して言うのです。来店はコロナ禍前だったから、およそ6年前になると思います。なのにと驚いてしまい、またちかいうちに来なくてはと思ったのでした。

Ⅱ.講演「合鴨とは?」
 25.6.9、江戸ソバリエ江戸(旧寺方)蕎麦研究会において、鴨専門製造メーカー大平産業の和田大輔様に、合鴨の話をしていただきましたので、以下簡単に報告します。

*合鴨とは?
 現在流通している鴨は、野生の鴨を食用および羽毛用の目的として家禽化した合鴨(=真×家鴨)のことを言います。 
 英語ではDUCK、フランス語では雄をCANARD(カナール)、雌をカネットと呼びます。
 鴨も長い年月をかけて品種改良等を行いさまざまな品種が誕生していますが食用の鴨はすべて合鴨と基準を定められています。

*主な品種は?
《北京種》
 ペキンカオチャー用として飼育された品種で短期間約(65日間)で太らせるため、強制的に飼料を与え内臓を除去し脱毛、脱血しただけのもの。北京ダックに主に使用。
チェリバリー種》
 北京種をもとにイギリスで改良された代表的な種類。日本の輸入の大部分がこの種類で流通量の約80%を占める。和食、鍋、蕎麦、饂飩に主に使用。
《ミュラール種》
 南米産マスコビ種をフランスで改良した大型種で皮下脂肪が多く大味のもの。(チェリバリーとバルバリーの交配)強制的に肝臓に脂肪をつけ肥大させフォアグラをとった胸肉を整形し1枚パックしたものをマグレー・カナールと称して販売。フランス料理に主に使用。
《バルバリー種》
 長い年月をかけてフランスで改良した大型種で皮下脂肪が少なく比較的癖がない。フランス産鴨肉の中では国内での需要は多い品種。和・洋・中の全てで需要がある。

*主な産地は?
《海外》船便にて、横浜港・大阪港へ
 中国・台湾・韓国・タイ・マレーシア・北アメリカ・フランス・ハンガリー・スペイン・ブルガリア・ブラジル・等
《国内》
 鹿児島・四国・大阪・京都・滋賀・埼玉・岩手・青森・青森・北海道等

地域

銘柄

品種

 

 

大阪

河内鴨

チェリバリー

 

京都

京鴨

チェリバリー

 

滋賀

近江鴨

チェリバリー

 

埼玉

浜田のあい鴨

チェリバリー

 

茨城

かすみ鴨

チェリバリー

 

 

つくば鴨

バルバリー

 

 

常陸鴨

チェリバリー

 

山形

最上鴨

チェリバリー

 

宮城

蔵王鴨

バルバリー

 

岩手

岩手鴨

チェリバリー

 

青森

津軽鴨

バルバリー

 

北海道

サロベツ合鴨

チェリバリー

 

 

スノーホワイト

チェリバレー

チェリバリー

 

25/6/1大平産業

*市場は?
輸入は6,740t、国産はその1/10以下(5-600t)
・国産が美味しい、日本人好みで柔らかい、クセがない。
・鶏肉はモモ肉、合鴨きムネ肉が美味しい。
 会場で試食してみても確かだった。
・これまでは地鶏料理が独創的に思われたが、昨今は鴨料理そのものが独創的と思われるようになてきて、ニーズが増えている
・「鴨が葱背負って」と言われるだけ、鴨も葱も冬場が美味しい。

Ⅲ.おわりに
*6月9日、江戸(寺方)蕎麦研究会後のお茶会
 会が終わると、いつも何人かはファミレスでお茶を飲んで、雑談して帰ります。今日の私は《レスカ》、他の皆さんはアイスクリームとビール。ファミレスなので、残念ながら鴨ありません。このとき私は、小林照男さんはホテトチップだったなあと思ったりしました。

*6月12日、根津「松風」
 ソパリエノ「岩」さんに、根津ランチに誘われました。何でも美味しい和食屋が見つけたらしいのですが、残念なことに今日は臨時休業だつたとのこと。というわけで何度もうかがっている「松風」に。· 先日の『アド街ック天国』でも、《グレープフルーツ蕎麦》が紹介されていた。
 でも今日は、やはり《鴨せいろ》。ちなみに「どこの鴨?」を尋ねると、「岩手です」とのこと。上の表を思い出しながら「あゝ、そうか」と納得した。
 これから私は、しばらく鴨の産地を尋ねるだろう。
  それにしても鴨つゆ+蕎麦湯は美味しい。癖になるね。

江戸ソバリエ協会
ほし☆ひかる