【3月号】 東京の食料自給率1%を、江戸東京の伝統野菜がリードする
執筆者:auc_shonin
先月、JA東京グループの営農指導を担当する職員が構成する、JA東京指導員連盟の研修会に呼ばれて、江戸東京野菜のお話をしてきた。
これまので、伝統野菜の栽培は東京農業のリーダーの方々に、無理をお願いしてきた。
特に市場関係者の中でも、仲卸の築地市場蔬菜部会から呼ばれてお話をさせていただいたが、最近の江戸東京野菜の話題から、飲食店などのお客さんから、注文も増え、江戸東京野菜についての知識を持っていないとお客の飲食店に説明ができない。
伝統野菜は、流通に乗りづらい作物だけに、収益だけを追求していたのでは採算の合わない作物だからで、貴重な遺伝資源を次の世代に引き継ぐことの大切さを理解できないと栽培できるものではない。
しかし、江戸東京の伝統野菜は、江戸東京の歴史が詰まった、生きた希少植物だと云う事を理解した者だけが取り組むことができる代物だ。
昨年、東京シティー青果を定年で退職された野田裕氏が、8年ぐらい前に地方の「道の駅」で、市場流通では見かけない珍しい野菜が並んでいるのを見て、その土地ならではの伝統野菜が東京にもあるのではないかと、探し始め、集荷し始めたと、伺っているが、当初は、江戸東京野菜ではなく、近在物として、市場の片隅に置かれていたものだ。
それに光が当たり始めたのが、2005年に食育基本法の法制化からで、地産地消が導入されてから、名前のついた伝統野菜が、各地で知友黙され始めた。
さらに東京では、2007年から、日本橋で、江戸東京野菜のブランド化の話が持ち上がり、今日、東京シティ青果が積極的にその取り扱いを行っていて、江戸東京野菜普及推進連絡協議会が2009年に結成され、生産者から、料理人、市場関係者、料理研究家やフードライター等が参加している。
里帰りした三河島菜
特に市場関係者の中でも、仲卸の築地市場蔬菜部会から呼ばれてお話をさせていただいたが、最近の江戸東京野菜の話題から、飲食店などお客さんから、注文も増え、江戸東京野菜についての知識を持っていないと商売にならないと云う状況だと云う。
築地市場でも評価されている奥多摩ワサビ
亀戸ダイコンや練馬ダイコンなど、これまで入荷していた伝統野菜はもとより、2008年に栽培が始まった品川カブもこれまでの金町コカブと形状が異なり、差別化できることから品川宿の品川カブの一本漬けが売れている。
また、奥多摩ワサビも江戸の頃から、多摩川をいかだで下って神田市場に入っていた。こんなことから、築地市場から姿を消していた奥多摩ワサビも市場から理解されるようになっている。
馬込三寸ニンジンも、10センチと可愛いく甘いニンジンだ。
さらに、寺島ナス、馬込三寸ニンジンなども、流通している野菜との差別化できることから、十分に市場性が出てきており、新たに「里帰りした三河島菜」にしても、物語性からも市場で注目されるようなっている。
このような、伝統野菜は、「東京農業」全体のペースをアップする役割もはたしていて、それが今日、江戸東京野菜を通して、東京の農業が注目されるきっかけになっている。
本年度、農水省東京農政事務所が調査したアンケートによると、都民が東京の伝統野菜に大変興味を持っているとの結果が出た。
先月、農水省の「食料自給率向上国民運動拡大推進事業」FOOD ACTION NIPPON推進本部事務局のプロデューサーが訪ねて来られた。
東京の食料自給率は1%。江戸東京・伝統野菜研究会ではさらなる向上を願って、江戸東京野菜を通して、農業の振興に取り組んできたが、その点を評価してくれてか、推進パートナーになることを勧められた。
しかも、同事務局では、これまで、日本経済新聞の土曜版「NIKKEIプラス1」に「地元素材を活かした食で町おこし」のテーマで、全国各県を巡って特徴的な取り組みを、3段抜きの連載、7回にわたって掲載してきたが、最終回は、東京に白羽の矢が当たり、小金井市の取組をメインに、当研究会を紹介してくれるようだ。