健康ニュース 5月1日号 熱中症と高血圧者と塩分

     

隣家のインテリ夫人「70歳過ぎの父ですが、40歳代のころから血圧が高いということで降下剤をずっと飲んでいます。食事も塩分控えめということで母も大変気を使っています。そんな父ですが最近健康講演を聴いてきて、ぶつぶつと文句を言っているのです。血圧の高い方は塩分を控えめにしろと言っておきながら、熱中症予防のためには塩分を摂らなくてはいけない、と講師が言っていたらしいのですよ。父としたら塩分を摂るべきなのか摂らないほうがいいのか、困惑しているようです。どうしたらよいのでしょうかね」

隠居中の大御所 暈穀菜「そりゃぁ親父さんとしたら困惑するわな。正反対のことを講師は言っているのだからな。でも講師も間違ったことを言ってはいないよ。説明が少し足りなかっただけだ。まず高血圧の親父さんは無条件で塩分を控えめにしなくてはいけないのは当然だ。でも熱中症対策としてはどうしたらよいと思うかな」

隣家のインテリ夫人「まったく分かりませんわ。血圧は安定してもらいたいし、かといって熱中症になられても困ります」

隠居中の大御所 暈穀菜「まず血圧を上げるのはナトリウム(Na)ということは知っているね。その体内のNaが多過ぎては困るので薬などで、Naを体外に出すのが治療法の一つだ。ところがNaの特性として水分保持作用というのもがある。血圧降下剤などを飲んでいると当然体内の水分は少なくなる傾向にある。そのために運動などで大量の汗をかいたときは、体内水分の不足が考えられることは理解できるだろう。そんなときはどうするのがいいかな?」

隣家のインテリ夫人「水分補給ですよね」

隠居中の大御所 暈穀菜「そうだよね。ところが塩分、つまりナトリウムが不足すると水分保持力が減っているので、せっかく補給した水分はまた対外へ出てしまうのだね。それを少しでも防ぐのはNa、つまり塩分を摂ることというのは理解できたかな」

隣家のインテリ夫人「なるほどね・・・。では父も熱中症予防には塩分を摂っても心配無いのですね」

隠居中の大御所 暈穀菜「まぁそうだが早とちりはだめだよ。あまり汗をかかないときは、高血圧者はもともと体内のNaは多いといえるから、熱中症予防には、単なる水分補給でいいのではないかな。血圧降下剤もどういう作用で血圧を下げるのか確認しておくと良いのだがね。昨年あたりから、高血圧症のものは熱中症になりやすいということも言われ始めている。これも高血圧の者は塩分を控えめに、ということを単純に考えてきた結果と言えるね。高血圧の人は食塩を1日6gにという指導もある。市販のスポーツドリンクや経口補水剤などには1㍑中に1~2gの食塩が含まれている。これを知っているだけでも食事の塩分量もうまくコントロールできるだろう。冷蔵庫には常備薬として準備しておくのも対策だね。今度時間があるときにゆっくり来なさい。食塩と塩分の違いについて話しておきたいことがある。今夜はたけのこに塩をまぶしてビールを楽しもう。準備を頼むよ」