早稲田大「農業者の後期高齢者医療費は非農業者の7割」
執筆者:shirai
早稲田大学重点領域研究機構の持続型食・農・バイオ研究所の堀口健治(ほりぐち けん
じ)名誉教授、弦間正彦(げんま まさひこ)社会科学総合学術院教授は、2017年2-3月にかけ農業者と非農業者を対象とした医療費と健康に関するアンケートを実施した。
同調査は、2016年4月に「自営農業者の医療費は、それ以外の人に比べ3割程度少ない」と発表した調査結果をより明らかにするために行われたもの。
前回の調査では、後期高齢者医療制度が把握する一人当たりの平均医療費と、国勢調査による75歳以上の都道府県別就業率のデータを分析して結果を得たが、今回の調査では農村部と都市部で基本的に同様のアンケートを配布して調査を行った。
アンケート項目は、➀家族の年齢・現在の仕事の種類、仕事をすでにやめている人の年齢とそれまでの仕事種類、②平成元年以降に亡くなった家族の死亡時の年齢・亡くなる前の仕事種類と仕事をやめた時の年齢、それまでの従事期間の長さ等となっている。
その結果、自営農業者男女は非農業者に比べると寿命が長く、特に男性はその差が大きいこと、仕事の従事期間の長さでは男女ともに自営農業従事者の方が長く、それが健康寿命の延伸化に貢献していること、自営農業者の引退年齢は男女ともに定年退職の年齢を超えた高齢時期を挙げており、自営農業者は70歳代前半まで健康に仕事に従事していたことが示唆されていること、自営農業者の引退後の余命は農業者以外の人と比べ男女ともに短いことが分かった。
以上のことから、農業者は非農業者に比べて寿命、健康寿命共に長く、前回の調査結果を裏付ける結果となった。
また、死亡年齢と健康寿命の差が短く、いわゆる「ピンピンコロリ」の特徴が示されていることが明らかとなった。
今後は、農業者の仕事や活動、生活スタイルがどのように長寿や健康維持に結び付くのかを明らかにするため、医療関係者やスポーツ科学の研究者とともに、農業者からの聞き取り調査や生活の観察等を実施する。
また、後期高齢者医療保険制度の医療費データをさらに活用し、健康な人の共通属性やライフスタイルの研究を発展させていく方針。
詳しい調査内容、データは https://www.waseda.jp/top/news/topic/52003