健康ニュース 6月15日号 今は昔・・・???
学生時代に学んだ古文にはよく「今は昔…」という書き出しがあったことを思い出します。
なぜこんなことから書き出したかと言いますと、健康講演では今もってフードピラミッド(図右)を引用している講師がいるということを知ったからです。
1990年、アメリカ国立がん研究所が、当時がんで亡くなる人が多いということで、がん予防効果のある植物性食品約40種類をピラミッド様式でイラスト化して発表しました。このイラストをフードピラミッドと言っています。特にピラミッドの頂点にニンニクを持ってきたものですから、日本のニンニク業者は大歓迎、販売促進資料として今も使っています。アメリカではこの発表後、ニンニクの売り上げが3倍になったそうです。
30年近くも前のデータをなぜ今頃も使ったのでしょうか。しかも市民には正しい健康情報を提供して当たり前の健康講師が・・・、という意味から「今は昔・・・」という書き出しになりました。
フードピラミッドには日本人の食生活に欠かせない食材、海藻・キノコ類がが欠けています。あくまでもアメリカ人を対象としたものですから仕方ありません。従って日本人にとっては何の参考にもならないのではないでしょうか。見た目が面白いからと言って、聴講する人には何の説明もなく、引用した意図が全く分かりません。
次の疑問点は、このフードピラミッド発表の数年後にアメリカ農務省は、「抗酸化物質を大量に含む野菜・果物ベスト20」を発表しています。そのベスト20中には、わが国ではあまり食されていないものも見受けられますが、がんなどと戦う物質と言う表現もされています
聴講者にこのフードピラミッドを話したことで、最も大きな問題点は、次のことです。
アメリカではおよそ20年近く使用されてきたフードピラミッドを改良した食生活指針として、マイプレートというものを2011年に発表しています。食品のパッケージに使用されたりして、広く浸透していることを講師はご存じないのでしょうか、疑問でなりません。
むしろ引用するならば我が国の厚生労働省や農林水産省が係わった「食事バランスガイド」(図左) を引用して講演するべきだと思いますが・・・。
平成17年、厚生労働省と農林水産省は合同で、食生活指針を具体的な行動に結びつけるものとして食事バランスガイドを発表しました。
食事の望ましい組み合わせや、量を分かりやすく示したものです。発表直後にはファミリーレストランなどでも良く見られたのですが、最近はあまり見たことがありません。
この食事バランスガイドにも過ちがあります。コマの左側には、「菓子・嗜好飲料、楽しく適度に」とあり、菓子・嗜好飲料は楽しみながらコマを回すヒモと表現しています。先進国で食事指針に菓子とか嗜好飲料を薦めている国があるのでしょうか。細部にわたり問題点を指摘するならば、このイラストを書いた人は左利きなのでしょうね。コマの回転する方向が逆ですから。