第770話 蕎麦+珈琲 ⅰ
2022/02/14
江戸ソバリエの店「北池袋長寿庵」を訪れた。
店主の飯高さんは勉強熱心だから、その話が楽しい。
この日、お蕎麦の後にデザートにプリンと珈琲を戴いた。
そのプリンはいま流行の〝ねっとり〟感の触覚だった。飯高さんと、「最近は、焼き芋、玉子物など・・・みんな〝ねっとり〟触感になってきたね」と話したものだった。何しろ、これまでのプリンッとしたプリンは「クラシック・プリン」と呼ばれているそうだ。
そんな話をしながら珈琲を一口飲んだが、その後味に「ン!」と思った。舌にまとわりついていたねっとり感が拭われて、サッパリするのである。驚いた。
「この珈琲は何?」と尋ねたところ、珈琲と蕎麦の実のブレンドだという。
「へえ~!」
ほんの少し前までの日本人は、食後にはお茶を飲んでいた。「お茶の苦味成分であるカテキンが口の中の汚れを取ってくれるから、舌苔の手入れや口中の衛生上にもいい」という理屈は知らなくても、習慣として自ずからそうしていたわけである。しかし、蕎麦や珈琲にはカテキンはない。だからカテキンのためだけとは限らない。もしかしたら苦味成分かとも思うが、珈琲に苦味成分があるにしても、蕎麦は微量である。それに蕎麦だけでも、珈琲だけでもこんなサッパリ感はないと思う。となると蕎麦と珈琲の相乗効果だろうか。今度、化学に強い人に確かめてみようと思った。
ところで、私は蕎麦の後によく珈琲を飲むことがある。
たとえば「銀座小松庵」でお蕎麦を食べた後は「らんぶる」で、とか。それは場所を変えて、連れの人ともっと話したいからである。
そんなことを前にこのブログでも書いたところ、ソバリエの石綿様に「蕎麦と珈琲は合う」と森村誠一さんが書いてますよ、と教えてもらったことがある。これまで私は蕎麦と珈琲の関係をあまり認識していなかったが、振り返ってみると、自家焙煎珈琲ブームと手打ち蕎麦ブームの時期は重なっていた。もしかしたらそこに何かの共通因子があるのかもしれない。湊かなえさんの小説にも、珈琲通の男が蕎麦に関心をもつというミステリー物があるのもそういうことだろうか。
そう思いながら、今朝も熱い珈琲を飲んだ。熱い・・・、珈琲は83℃ぐらいが美味しい。
もう一度話を戻して、温度とサッパリ感とは何か関係があるだろうか。しかし 温度までになると、話が広がりすぎるから、この辺でやめる。
とにかく機会があればもっと蕎麦と珈琲の関係を追究してみたいものである。
〔江戸ソバリエ ほし☆ひかる〕