矢野経「2022年飲料受託製造市場に関する調査」
執筆者:編集部
矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は国内の清涼飲料の受託製造市場を調査し、エリア別、製品カテゴリー別の動向、参入企業動向、将来展望を発表した。飲料受託製造市場は受託製造事業者売上高ベースで2020年度が前年度比88.6%の5,060億円と大幅に縮小し、2021年度も同100.4%の5,080億円とほぼ横ばいでの推移となった。新型コロナウイルス感染症の影響は飲料メーカー以上に飲料受託製造企業にも拡がっている。2021年度飲料市場は回復基調となっているもののブランドオーナーからパッカーへの委託数量の回復にはタイムラグが出ており、パッカーの回復は遅れている。コロナ禍が始まって以降、飲料市場および飲料受託製造市場はより不透明な状況となっている。感染が最初に拡大した2020年度は発注がキャンセルされるなど、落ち込みを見せたパッカーも多く存在したことから、飲料市場全体だけでなく、パッカーもさらに厳しい状況になっているとみられる。近年はブランドオーナー各社が収益重視の方針を鮮明に打ち出し、基幹ブランドを起点に安定した販売が見込める商品によって収益を確保しようとする動きが目立っており、コロナ禍でその傾向がさらに顕著になった。ブランドオーナーは基幹ブランド商品を大ロットで製造することで、効率化や工場の稼働率低下防止を実現しているため、その分パッカーへの委託数量は減少した。一方で、コロナ禍以前に大手清涼飲料メーカーを中心に活発に行われていた設備投資や工場の新設が一段落ついたことや、コロナ禍により市場の先行きが不透明になったこともあり、投資が落ち着いている。中長期的な飲料市場の縮小が見込まれる中、飲料受託製造市場を取り巻く環境は厳しい。市場の増減がある程度ブランドオーナー側の製造戦略に左右される特性上、継続的な拡大は難しいものと予測する。工場を安定的に稼働させていきたいのはブランドオーナーもパッカーも同じであるが、製造のイニシアティブがブランドオーナー側にあり、各社が内製化の動きを強めている以上、パッカーの総受託数量も中・長期的にはより減少していく可能性がある。