健康ニュース1月15日号 健康本、科学的根拠は?
開業医師などを対象にしている情報誌「Medical Tribune」が伝えるところによると「日本の健康本、科学的根拠は米国の2割弱」ということです。
これは何を意味していると考えたら良いのでしょうか?
サプリメントや健康器具の持つ効果効能を、庶民に分かりやすく書籍で解説しているいわゆる健康雑誌には、科学的な根拠が極めて少ないということではないでしょうか。
報道内容は「食と健康に関する情報は新聞や書籍、テレビ、インターネットなどに溢れていますが、科学的根拠に乏しく、信頼性が低いものも少なくない。日本人の23%、米国人の約30%が食と健康の情報を、一般書(以下、健康本)から得ているという報告があるものの、健康本の科学的正確性を検証した研究は他メディアに比べて少ない」とあります。
さらに「日本の健康本でヒトを対象とした信頼できる論文などを引用している割合は米国の2割弱に過ぎなかった」とあります。(_____分、レポートでは、システマチックレビューとあります)
さらに「食と健康に関する誤った情報は疾患や死亡のリスクを高める恐れがあるため科学的正確性が求められるが、健康本の情報や質については十分に検証されておらず、いわゆるトンデモな内容が散見される」とあります。
また食事摂取に関する公的な指針、我が国では農林水産省発表の「食事バランスガイド」、米国では、米国農務省・米国保健福祉省の「米国人のための食生活指針」などを引用しているのは、米国の19冊に対し、日本は4冊と少なかった、とあります。
レポートは結論として以下の趣旨を述べています。
「米国に比べ日本では、健康本に記載された情報の科学的根拠について十分な量と質を、特定可能な形で提示している割合が少なかった。一般書の著者であっても科学的根拠の重要性を理解し、活用できるスキルを身につけるべきである」と結論づけています。
さらに、令和5年11月には東京大学の研究チームが、インターネット上で閲覧できる健康食品やダイエットの情報については、半数以上に参考文献がなく、著者が明記されていないなどの調査結果を発表しています。
同チームは「誤った情報で健康上のリスクを招きかねない」と警鐘を鳴らしています。
同チームはさらに、「ダイエット方法」「ビタミン効果」のキーワードで検索すると、発信元はメディア、食品企業、医療関係、政府機関などだったとのこと。しかも60%は参考文献が一つも無かった、54%は編者・著者の明示が無かったとあり、全体の58%に広告が付随していた、とあります。「インターネットに掲載されていたから」「上位に掲載されていたから」などが必ずしも信用に足りるものとは判断できないと言えます。
ある健康講演会で講演をした某医師が勧めるサプリメントについて質問をしたことがあります。その時某医師は、「このサプリメントについては私の著書をぜひ読んでください。あらゆる角度からの臨床結果を書いてあります」との回答でした。この医師は一年毎に異なるサプリの解説本を出版していますが、その時の体験から学んだことは、医師だから、学者だからと言って頭から信じることは健康にとってマイナスとなることもある、ということでした。
何年も前に日本中が「ココナッツオイルの摂取は認知症予防対策になる」という某大学教授のPRに翻弄されたことがありました。曰く、「ココナッツオイル摂取の多い南洋諸島の人に認知症は少ない」というのが教授の主張でした。
南洋諸島の人々の平均寿命は、認知症の発症年齢に達していないということを教授はどう理解されていたのでしょうか?消費者庁が「ココナツオイルに認知症予防改善の根拠なし」と発表後、ブームは急速に去りました。その教授は何のコメントも出さず、最近は旗を振って健康茶を奨めていますが・・・。近 竹将