第908話 神話の世界の麹菌
2024/08/01
用があったので、二日続けて秋葉原を訪れた。
昼食時、近くに蕎麦店が見当たらなかった。それならご縁のあるお店にしようと、久しぶりに「こまき食堂」に立ち寄って、一日目は《車麩のフライ定食》二日目は《大豆ミートの唐揚げ定食》をいただいた。
ご縁というのは、たいぶ前に韓国のテレビ局が日本の蕎麦店を紹介してほしいということでお付合し、その翌日はテレビ局と鎌倉不識庵に行くことになったことがあった。どうしてかというと、同庵で精進料理を撮影することになっているが、蕎麦とか麺類が入っていたら、説明してほしいとのことだった。
鎌倉不識庵というのは、建長寺の元典座だった藤井宗哲の料理塾であるが、宗哲亡き後は奥様が庵主だった。ちょうどそのころ、娘さんが秋葉原で「こまき食堂」を開かれたので「ついでがあったら、顔を出してほしいと言われてからのご縁だった。
「こまき食堂」で、食事をしているとき、スマホの着信音が「ピン♬」と鳴った。ソバリエでボサノバシンガーの「幸」さんからだった。
いま人形町のほうじ茶店でアイスを食べているとあった。前にテレビで外国人のお茶屋が紹介されていたが、その近くらしかった。これから赤坂のジャズ喫茶に行くとのことだった。
ウ~ン、ジャズも魅かれるが、昼食後は和食文化国民会議のセミナーの予定、しかも江戸ソバリエ認定講座のチラシを配付する約束をしている。今の私には重要な任務、だから行きたいなと思いながらも「これからセミナーです。お楽しみください」と返信した。
なぜこんなメールをいただくかというと、レパートリーとしてジャズなどを増やしたいから、素敵なジャズを推薦してほしいとのやりとりがあったからだと思う。
さて、今日の和食文化国民会議のセミナーは『和食と健康』というテーマだった。
この講座のなかで一番納得したのは、戦後、日本人は急激に寿命を伸ばした。しかし、江戸時代の日本人も和食(ご飯・味噌汁・魚・野菜)だったはずなのに、平均寿命は40歳代だった。どうなってるんですかという課題だった。俗説にチャレンジ対する姿勢は好ましい。【江戸蕎麦】は常にそういう理念で動いてきたつもりである。
さて、対する答えは、伝統和食(ご飯・味噌汁・魚・野菜)∔外来洋食(肉・卵・乳製品)が戦後からの日本食になっている。これが平均寿命を伸ばしている、ということだった。「なるほど」である。
それから最も驚いたのは、【稲魂】の話である。
「稲魂」は神様としてよく耳にする。
日本書紀では「倉稲魂命」と書き、古事記では「宇迦之御魂神」と書いてある。どちらも「ウカノミタマ」と言う。宇迦は穀物・食物の意味だから稲魂として神格化されたがものということで、多くの神社の祭神である。
現実的には、稲の穂に付いている小さな黒い粒みたいな物が稲魂とされ、今日のお話だとそれは稲麹だという。そしてその菌叢の主体は【アスペルギルス・オリゼー】で日本にしかいない麹菌ということで、「国菌」になったという。
記紀の世界と麹菌が結びつくとは、古代日本人の眼力はすごいものだと驚いた次第である。
江戸ソバリエ協会
ほし☆ひかる