黒大豆ポリフェノール「肝損傷予防効果」が明らかに

      執筆者:shirai

pori神戸大学大学院農学研究科の芦田均教授とフジッコの共同研究により、黒大豆ポリフェノールが肝線維化や炎症などの肝損傷を軽減させることが明らかとなり、10月9日~13日、米国フロリダ州オーランド市で開催されるISNFF(The International Society for Nutraceuticals and Functional Foods)2016において共同研究成果が発表されることとなった。黒大豆種皮は様々な漢方書において「解毒」、「養血平肝」、「酒食諸毒を癒す」などの薬効を有するものとして記され、肝臓への保護作用があるとされていた。黒大豆種皮抽出物(BE)は、プロシアニジン、シアニジン3グルコシドをはじめとする多くのポリフェノールを含んでいる。これまでに、抗酸化作用、抗炎症作用、抗肥満、抗糖尿病作用など、多くの生理活性を有することが報告されている黒大豆ポリフェノールは、肝臓の炎症による肝線維化(肝臓を構成するコラーゲンの産生と分解のバランスが崩れた状態。線維化が進行すると、肝硬変へと移行する場合がある)に対しても有効である可能性が考えられた。そのため、四塩化炭素誘発による肝線維症モデルマウスを使用した黒大豆ポリフェノールの投与試験を行った。ICRマウス(オス、6週齢)を四塩化炭素(CCl4)投与群と非投与群にわけ、さらにCCl4投与群は普通食群と黒大豆種皮抽出物(BE)含有食(0.5~4%)群に分け、8週間後、解剖を行ない、肝臓の損傷および炎症、繊維化を評価するために、各種マーカーを測定した。陽性対照としてはSilymarin(肝機能改善薬。肝機能の損傷を予防するとともに、傷ついた肝臓の細胞を再生する)を用いた。結果、CCl4投与によって肝臓の損傷が引き起こされ、肝線維化が促進されたが、黒大豆種皮抽出物含有食群の肝損傷、脂質過酸化、炎症は、普通食群に比べ顕著に減少した。肝線維化の予防に対しても、BEは、CCl4によって誘発された線維化マーカーであるα-SMA、Collagen-Ⅰ、TIMP1の発現を抑制した。また、BEはTGF-β/Smad経路の活性を低下させることが分かった。黒大豆ポリフェノールは、CCl4が誘導する酸化ストレスを抑制し、TGF-β/Smad経路の活性を低下させることで、肝線維化や炎症などの肝損傷を軽減させることが明らかとなり、黒大豆ポリフェノールを活用した肝損傷予防に期待が寄せられる結果となった。