健康ニュース 12月15日号 論文にも玉石混交

     

仕事の関係上多方面から健康に関する数多の情報が届きます。その数は有料のものから無料のものまで含めると一日平均70~80件に達しています。

そんな中で、「これはどうかなぁ」と思う情報も多々あり、取捨選択する判断力が求められることは言うまでもありません。などと自惚れているわけではありませんが、注意深くチェックしないと、誤った情報を読者の皆様へ発信してしまうリスクがあることは、いまさら言うまでもありません。

次のような情報を、どうお考えでしょうか?

「膝の痛みを改善するA商品の購入者2千人にアンケートとった結果、使用者の8割が満足!」

もしあなたが膝痛でお悩みなら早速注文をしますか?

少しだけ考えてみませんか?A商品を2千人が購入したことを仮に事実としましょう。満足したのは1600人とお考えでしょうか・・・。アンケートの回収がどれほどあったのかについては全く触れていません。5通しか回答がないなら、2千人のうち満足したのは4人しかいないことになります。それでもあなたはA商品を購入しますか?

先日届いた一件の情報に次のようなものがありました。

アテネ大学研究班の論文ということですが、「健康長寿の秘密はコーヒーにあった!」という見出しで、「ギリシャのイカリア島8000人住民のうち、90歳以上は100名。毎日コーヒーを飲む習慣があり、142名を調査、その結果50%の人が血管に弾力性があり、しなやか」という内容です。

この記事を見た時、コーヒーには、血管に弾力性をもたらして長寿を実現する有効成分がある、と考えるのではないでしょうか。

小子なりに分析してみました結果、問題点(疑問点)は以下の通りです。

  1. 90歳以上が100名とは、全島民の約1・25%。日本人の90歳以上は全国民の約1・6%。この島では90歳以上の人の率が低いですね。(コーヒーの飲み過ぎでしょうか?)
  2. 142名の調査とは、島民全体の1%にも達していない0・89%。この調査数をもって、毎日のコーヒーが血管に弾力性を持たせるという結論は、いかがなものでしょうか。

この調査結果をもって、健康長寿の秘訣!とは東京スポーツ新聞並みの見出しと言っても過言ではないでしょう。

例として適切か否かは別として、「日本人の中で90歳を超える人は全人口の1・6%です。この90歳代の殆どの人はご飯を食べています。長寿の秘密はご飯にあります。ヨーロッパの人たちもご飯を食べましょう」と言っているのと何ら変わりはないのではと思いますが・・・。(コーヒーが健康長寿に貢献していない、と言っているのではありません)

毎日のように放映されるTVでの健康情報。ショッキングな見出しの多い週刊誌の健康情報。本屋に行けばあふれる健康関連書籍。まさに健康情報がこれでもか、これでもかと渦巻いている状態です。悪しきことに、これらの情報を鵜呑みして伝達する宣教師的な方も大勢います。

来る年も新しい健康情報が出ることでしょう。熱し易く冷め易い国民性でしょうか。