第619話 第18回更科堀井の会だより

      2020/02/23  

18回目を迎えた更科堀井の会(四季の会)は5年目に入っている。
毎回、大竹先生が四季の江戸東京野菜の情報を提供し、それをもとに林幸子先生(江戸ソバリエ講師)がレシピを作り、更科堀井の河合料理長はじめ料理人の皆さんが作られる。
そうやって作った料理はこれまで131品にものぼり、一回もタブった料理はない。常に最初で最後の逸品である。実におそるべき、また誇るべき力だと思う。

今日の冬の会の御献立は、次のようなものだった。
一、野良坊菜のお色直し
一、品川蕪のコンフィ 蕎麦の実餡掛け
一、練馬大根蕎麦の実フレーク揚げ (6名)
一、内藤唐辛子平打ち 鴨ミートソース (7名)
一、野良坊菜と鴨の治部煮蕎麦屋仕立て
一、江戸城濠大根打掛蕎麦
一、更科の独活羊羹 (ほぼ全員)
(※ 全料理に推薦があったが、上記以外は表示割愛)

参加したソバリエさんに感想をうかがってみたところ、「いつもと異なりお蕎麦も堪能した」とか「蕎麦が主役で嬉しかった」という声があったのは、《内藤唐辛子平打ち 鴨ミートソース》や《江戸城濠大根打掛蕎麦》などの蕎麦切や蕎麦を素材として料理が多かったためだろう。
それに、各自「美味しかった」として推奨された料理は全般にわたっていたが、その中でとくに「見た目パスタ、食べるとお蕎麦」だとか、「驚いた」、「インパクトが強烈だった」との声が多かったのは《内藤唐辛子平打ち 鴨ミートソース》であった。唐辛子切も、蕎麦+鴨も、ソバリエにとってはお馴染みである。しかし伝統では唐辛子切りは更科粉で打つが、今日のは一般的な二八粉、しかも平打ち、それに蕎麦つゆと洋式の鴨ミートソースで仕上げた逸品である。
次に人気だったのが《練馬大根蕎麦の実フレーク揚げ》である。「ボリューム満点」、「大根が香ばしい」、「大根のあまみ」、「蕎麦の実をまとうことで一気にご馳走になってしまう」、「カリカリが美味しい」「蕎麦の実フレークは揚物にぴったり」とその評価表現が豊富だったが、それだけに美味しさか豊かだったということだろう。
加えておくが、締めの甘味である《更科の独活羊羹》は「独活が羊羹になるとは思ってもいなかった」と、全員が絶賛されていた。
ところで、今日は二つの新しい試みをもった。
一つは《野良坊菜のお色直し》で新製品である「ベジセーフ」を使用したことである。つまり「ベジセーフ」を加えた水で洗った生野菜を皆さんに齧っていただいたわけであるが、シャキッとした歯触りと野生味を楽しむことができたと思う。面白い試みで、これからもまだ利用域の余地があるのかもしれない。
もう一つは今日が社会への初登場であるという辛味大根の「江戸城濠大根」である。これがどういう蕎麦にふさわしいかは、われわれ江戸ソバリエの今後の課題であるように思われた。

最後に多少私事ぎみではあるが、2日目には茨城の月の井酒造の社長さんが、参加されて「月の井」の差し入れがあった。何が私事ぎみかといういうと、このお酒のレイアウトは、実はデザイン事務所をもっているわが家の婿殿の仕事、かつ「月の井」の字を書いたのはわが妻という因縁の商品だった次第。でも美味しいお酒です!

※ベジセーフ:99.9%の純水に少量のカリウムを混ぜたものを電気分解して作ったもの。マイナスイオンの性質をもつ。

〔文・絵 ☆ 更科堀井の会 ほしひかる