第957話 佐賀の居酒屋

     

          
 ソバリエの「宮」さんから、「佐賀の酒と料理の旨い店があるから、佐賀県人、集まれ!」とお誘いがありました。場所は自由が丘駅のすぐ近くでした。
 集まったのは「一」さんと、「宮」さんの後輩で佐賀にご縁があるという「T」さんの4名。

 店内の棚を見上げますと、なるほど佐賀の酒が所狭しと並んでいます。しかも店主も佐賀県人とのこと。先日テレビで、移住したい都道府県のアンケート結果というを番組をやっていましたが、移住したい所は1北海道・2京都・3沖縄で、したくないのが45佐賀・46埼玉・47茨城というのでした。でも、移住先だというのに、見れば観光地ばかり、だから「なんじゃソレ」という感想でしたが、それはそれとして知名度のない佐賀を売り物にしているこの店主には尊敬の念をいだきました。
 それにしても佐賀ってこんなに酒があったっけというほど並んでいます。思えば、遠縁にあたる「窓の月」(佐賀市)、「芙蓉」(佐賀市)、「松浦一」(伊万里)は子供のころから聞きなれた酒の名前ですが、小さな酒造だから当店では見当たりません。このうちの「窓の月」の当時の故・社長は私の仲人でしたが、その孫が近くの目黒に住んでるはずだけれどと思っていると、「宮」さんが、佐賀なら「鍋島」でしょうと注文します。「鍋島」は2011年、インターナショナル・ワイン・チャレンジの日本酒部門でチャンピオン・サケを受賞してから、その名は広まりました。飲みやすく美味しい酒です。続けて、中学同級生に七田の息子がいたなと呟くと、宮さんが、じゃそれいこうと「七田」を注文します。

 料理は、刺身、鯵フライ、牡蠣フライ。帆立の刺身はあま味があって美味しい。フライは口に優しい揚げ方でした。九州の揚げ方はこれだと思います。新鮮な鯵をうまく包んで美味しく仕上がっていました。時々東京で、超カリカリに揚げたフライに出会うことがありますが、口の中が怪我しそうです。衣を付けた揚げ物のルーツは外来の《長崎天麩羅》です。その揚げ方は柔らかいのです。《江戸前天麩羅》は頃むが薄くなって最高に美味しくなりました。一方のフライ物は当店のような柔らかめの揚げ方が美味しいと思います。
 締めは《鮭といくらの親子丼》です。一口味わいますと、酢飯です。ン、これは美味しい。《いくら丼》は酢飯がいいか、普通の飯がいいかが問題です。新鮮ないくらを味わうには酢飯じゃない方がいい。いやそれだったら《いくら》だけでいいじゃないか、《いくら丼》は「いくら+飯」を楽しむもの、鮨と同じだから、鮨同様に酢飯がいいと、賛否両論です。私は、酢飯派でしょう。
 ごちそうさまでした。

追伸:「宮」さんと「一」さんは、身体を張って、楽しく(一さんが言うには「酒行 シュギョウ」だそうですが)、「T」さんを認定講座に誘っていただきました。「T」さんぜひよろしくお願いします。

江戸ソバリエ
和食文化継承リーダー

ほし☆ひかる