第352話 新しい知性の達人たち

     

駒込「小松庵総本家」の小松社長(江戸ソバリエ講師)と時々お話することがあるが、「身の周りには尊敬する人たちがたくさんいる」とよくおっしゃる。それこそ尊敬に値する言葉であるので、その話にちょっと耳を傾けてみよう。

18☆ほし絵

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彼らが活躍している分野はまちまちで、蕎麦職人だったり、江戸蕎麦研究家だったり、ピアニストだったり、音楽評論家だったり、農家だったり、テニスコーチだったりです。
しかも、皆さんには何か似たもの、あるいは共通点があるように思います。
一番に気付くのは、彼らは相手の長所を見抜くのがうまいことです。もちろん短所も見えているのでしょうが、それよりその人の魅力の方に関心が向かうようなんです。達人は、人を伸ばす勘所を知っているのでしょうね。
そしてもうひとつ、彼らは自分の目をもっていて、決して世評には流されません。それでいて頑迷ではなく、常にやわらかな風が心の中に吹いている。そんな感じがします。権威、評判、周りの目、何するものぞです。
では、なぜ似てくるのでしょうか。私の見るところ、共通しているのは皆さんがよく身体を使っているということです。まず、ルーチンワークを徹底的に行っています。ですが、問題はその後です。そのまま「ああ、疲れた」で終わってしまえば、単なる労働。しかし達人たちはちがいます。自分の感覚や身体の微妙な変化に耳を凝らします。身体が考える。彼らはそのことを知っています。ある意味では現代は頭の時代でしょう。ですから、ややもすれば全てをロジカルに、科学的に解決しようとします。でも、それだけていいのでしょうか。無理があるとは思いませんか。
これからは、より感覚や身体の使い方が生み出す、新しい知性の出番ではないでしょうか。
新しい知性の達人、こんな人たちを「尊敬する仲間たち」と呼びたいと思います。

参考:駒込「小松庵総本家」の小冊子より

〔江戸ソバリエ認定委員長 ☆ ほしひかる