第368話 蕎麦は世界をつなぐ
~ 深大寺夏そばの集い ~
7月16日、今年も江戸ソバリエ石臼の会の人たちによって、そば守観音様とご本尊様への「献そば」が行われた。
その後、客殿で「夏そばの集い」がある。夏そばの産地を応援しようということで始まり、今年で6年目になる。
これまで、豊後高田などの夏そばが供されていたが、昨年から鹿児島の志布志産の夏そばを楽しむようになった。
志布志の夏そばというのは、「日本一早い」を謳い文句に6年前からブランディグを目指している。
その志からか、今年は「そばの出前」と称する目玉的イベントが企画された。それは九州南端の志布志市から東京調布市の深大寺までの300里を原付バイクでそばを運んで来るというのである。バイクは無事到着、深大寺境内にて志布志市長から調布市長へ夏そばが進呈された。
志布志産の夏そばは、元は春蒔き品種「春のいぶき」、33軒の農家が従事している。栽培面積は約12ha、昨年の収量は約7tだったが、今年は天候不順のためおもわしくないという。天候不順・・・、これが農業の弱点である。天は、人間の思うようにはなかなかやらせてくれない。食べる側はそれを知っておかなければならない。それが会の目的でもあろう。
客殿では、多くの人のスピーチが続いた。しかし、話が上手いのはやっぱりご住職だ。楽しげな話振りについつい大笑いしてしまうが、実はたいへんなことをおっしゃっている。
「この会には寺院の関係者ばかりでなく、神社の宮司さんをお招きしている。世界中が宗教的に、民族的に混乱している今日だから、深大寺という小さな所ぐらい、仲良くつながりたいという思いがある。来年はキリスト教会関係者もお招きしたい」とおっしゃっていた。
催事もひとつの作品である。その作品に、愛や夢や、願いや希望が込められているなら、人に感動を与えるだろう。
だから、住職がそれを話されたとき、皆さんは大きな拍手を贈られた。
江戸ソバリエ協会としても、少しぐらいご住職の、そんな思いに近づければということで、ソバリエの、神田明神、九品院蕎麦喰地蔵尊、将門神社など寺社への蕎麦奉納チームに亡きご主人に声をかけてみた。そのうち、今年も天目山チームにご参加いただいた。
参加された一人の平林さんは、「蕎麦は、宗教間の狭間をとりもつのですね」と感嘆されていた。
最後に、志布志市長がマイクを持って「今日、使った箸は志布志市からお土産に差し上げたい」と挨拶された。
箸は端と端をつなぐ物。日本の南端の志布志市と中央の調布市(深大寺)を橋渡しでつなごうという粋な計らいが心憎かった♪
参考:平成28年7月16日第6回深大寺夏そばの集い、
〔文・写真 ☆ 深大寺そば学院 学監 ほしひかる〕