第372話 想い出のサンフランシスコ-Ⅱ

      2016/08/26  

今夏も江戸ソバリエ認定講座が始まった。
耳学+手学+舌学+脳学によって、江戸蕎麦を学んでもらい、蕎麦通になろうという講座である。
そのうちの手学講座は、いわゆる蕎麦打ち体験教室である。受講生には初級から上級の人まで様々だ。初級クラスの人は一から、上級の人はさらに深く学ぼうということでレッスンを受ける。指導方式は講師の方とスタッフの方々が手を取るように教えてくれる。
そのスタッフのお一人に北川さん(江戸ソバリエ)がいらっしゃる。
彼とは二度もサンフランシスコにご一緒したから、休憩時間に何となく過日放映の「家族に乾杯」の話題になって、サンフランシスコの想い出を語り合った。そのとき北川さんが、「実は咸臨丸の模型を作ったのですよ」と言って写真を見せてくれた。
へえ~。写真を拝見すると、ご覧のように凄い。
1/75スケールで全長が820mmの木製模型だそうだ。咸臨丸1咸臨丸2

しかし、感心する前に「なぜ咸臨丸か?」を言へば、それは私たちがサンフランへ行った年が、咸臨丸遣米150周年にあたる2010年だったから、チーム名を【Tokyo Soba Meister kanrinmaru”】として渡米したためである。

私のモットーは、「始まる前から始め、終わってからも終わらない」である。子供のころ先生に言われた「予習、本番、復習」を怠ってきたから、大人になって、遅まきながらそれをやっているのかもしれないが、マアそれが企画の元ともなることもある。
だから、渡米の前は、咸臨丸の艦長だった勝海舟の曾孫さんに皆さんと一緒に会いに行ったり、勝海舟の書があると聞けばツアーを組んで、見に行ったり、ついには咸臨丸出航地の浦賀を訪ねたりし、帰国したらしたで、小説「サンフランシスコの咸臨丸」を書いたりした。
そんな風だから、よく人さまから「ほしさんは、一度の体験を10倍楽しんでいる」と言われることがあるが、確かに十二分に楽しんでいることは事実である。
ただ、北川さんのようにマメで、根気のある仕事はできないな~、と写真を拝見しながら舌を巻いた。
だけれども、先に電話をもらったMさんや北川さんや、もちろん私も、「咸臨丸」や、「サンフランシスコ」といったキーワードが心に在ることは素晴らしいことにちがいない。

もしかしたら、「想い出のサンフランシスコ」という曲を作った人も、同じ思いをいだいたにちがいないなどと思いながら改めて「想い出のサンフランシスコ」の曲を聴き直してみた・・・。

参考:
ほしひかる『蕎麦談義』第369話「想い出のサンフランシスコ」、
ほしひかる「サンフランシスコの咸臨丸」(『日本そば新聞』平成22年7月号~10月号)、

文:Tokyo Soba Meister “kanrinmaru”乗組員 ほしひかる
「咸臨丸」製作:同 :北川庄司