コンビニ創業戦記「サンチェーン創業物語」(第42回)
2017/01/27
<サンチェーン・ダイエーグループ時代(その24)>
――シテイ・コンビニエンス・サンチェーンの終焉――
「エピローグ」
サンチェーン創業13年目を迎えた平成元年=昭和64年(1989年)は、「昭和終焉」の年であると共に、ベルリンの壁が崩壊して、20世紀後半の世界を極度に緊張させ続けてきた「冷戦構造」が終結を迎えた年、まさに人類史上の大転換の年であった。
この年こそは、(株)ダイエーコンビ二エンス・システムズ(=現在の(株)ローソン)が、新しく再発足した年であると同時に、私個人にとっては、(株)サンチェーンとしての独自の歴史が終幕となった、終生忘れることの出来ない年でもある。
現在のローソンは、日本の大手流通企業の中でも、最先端のポジションに位置しているが、これも近々ここ数年にして、そう成ったわけではない。
ローソンは、この国におけるコンビニエンス業態の草創期から、滑走期から、離陸期、上昇期を経て、今や右肩上がりの時代は既に終わり、成熟期、再構築期という大きな転換期を迎えている。
今さら云うまでもなく、そこには35年を超える長い道程の歴史があるのだ。
しかしながら歴史は、往々にして意識的に忘却され、あるいは日常に埋もれ、現時点の人々には、今日のよって来たる淵源や背景、その時々のプロセスにおける多くの先人たちの試行錯誤の苦闘や、積み重ねられた目に見えない隠れた貢献の数々には,気付かなくなるものである。
歴史の創造・建設に一貫して携わってきた人間にとっては、それでは余りにも哀しく、残念である。
私が、この<コンビ二創業戦記「サンチェーン創業物語」>を書き残そうと考えた動機も、実はそこにある。
私自身の現役時代に書き貯めた65冊に上る社長日誌や社内会議記録、150号に達した手作りのサンチェーン社内報「流通レーダー」、そして、その時々の新聞記事のスクラツプ帳などに加えて、自分自身の記憶を鮮やかに想起しながら書き連ねてきたのが、この<コンビ二創業戦記「サンチェーン創業物語」>である。
「ハワイ商法を活用することから始まる」
サンチェーンの創業は、何と云っても、夜の商売である「キャバレーハワイ商法」から出発し、それを昼の流通事業に活かそうとすることから始まったのである。
「ハワイ商法」の特質は、
①・水商売の正業化という「理念経営」
②・大衆料金明朗会計の「大衆商法」
③・楽しい時間を商品化する「生産性の追求」
④・女性社員「(ホステスさん)の「福祉を重視」
⑤・男子社員「教育と規律」を重視
⑥・「社員暖簾分けシステム」による急速多店舗全国展開
⑦・ビールメーカー・有力酒販店などの「他人資本を有効活用」する、などの手法を、戦略的に、そして組織的に、短期間に集中して、爆発的に実践したことにある、と私は考える。
これらの経営手法は、当時の業界常識から見れば、将に革命的な発想であり、常識破りの異質な経営手法であった。
と同時に、今から振り返れば、当時の時代状況、社会情勢の急激な変化に適合した、非常に合理的で、体系的、戦略的な経営手法でもあったといえよう。
であればこそ、昭和50年(1975)代初頭の一時期、(株)T・V・Bグループ(キャバレー・ハワイグループ)が急成長、大躍進して、経済界注目の花形企業と成り得たのだといえよう。
また、TVBグループがその事業のピークを過ぎた時、拡大した戦線を整理するための見事な撤収作戦を、鮮やかに展開して、世間を騒がすような経営破綻を引き起こさなかったことは、知る人ぞ知るであろう。
サンチェーンもそのプロセスの中では、大きな貢献を果たすこと出来たものと、私はひそかに自負している。
ともあれ、サンチェーンの創業は、この「ハワイ商法」を原点に、「大衆の暮らしに身近な流通事業を展開しよう」という基本構想からスタートしたのである。
<コンビ二創業戦記>の第一幕としての「サンチェーン創業物語」最終回にあたり、ここで今一度、総括の意味を込めて、これまでの41回分の内容を年表の形でサマり-しておきたいと思う。
<サンチェーンの主な動き> | ||
昭和51年(’76) | 10月 | (株)TVBサンチェーン設立 |
11月 | パイロット店(駒込・町屋・富士見台)オープン | |
昭和52年(’77) | 3月 | 18店舗で全店24時間年中無休営業開始 |
4月 | 定期新卒採用第一期入社 | |
社内報「流通レーダー」創刊 | ||
8月 | 電算機FAKOM-V導入 | |
10月 | 第1回社員総会開催 | |
11月 | サンチェーン青果(株)設立・直仕入れ個店配送開始 | |
(株)サンデリカ設立・お弁当チェーン実験開始 | ||
「100店舗達成記念謝恩パーテイ」帝国ホテルで開催 | ||
12月 | (株)関西サンチェーン設立・大阪出店開始 | |
昭和53年(’78) | 1月 | 第一次コンピューターシステム「SUNICS」導入 |
2月 | 社員独立フランチャイズ制度開始 | |
4月 | ペガサスセミナーで「100店舗達成記念」表彰受賞 | |
7月 | 東海・名古屋出店開始 | |
8月 | 九州・福岡出店開始 | |
8月 | サンチェーン商事(株)設立・加食物流センター開始 | |
10月 | 北海道・札幌出店開始 | |
東北・仙台出店開始 | ||
11月 | サンチェーン流通学園開設 | |
12月 | サンデーリー(株)設立・日配食品物流センター開始 | |
昭和54年(’79) | 3月 | 東海・九州・北海道・東北を子会社化し9社体制とする |
5月 | 第1回社内運動会開催 | |
10月 | アメリカCVS視察セミナー実施 | |
昭和55年(’80) | 9月 | (株)ローソンジャパンと業務提携しダイエーグループに参加 |
(株)サンチェーンに社名変更 | ||
長崎・新潟に進出 | ||
昭和56年(’81) | 8月 | 小型コンビ二「プチサン」1号店実験開始 |
9月 | 焼きたてパン導入実験店「アドバンスコンビ二」 | |
早稲田通り店オープン | ||
11月 | 5周年記念社員総会中内CEOを迎える | |
第二次コンピューターオンラインシステム「ATLAS」 | ||
店舗端末{ASSIST}導入 | ||
昭和57年(’82) | 1月 | 新型レジ(責任・部門キー付き)導入 |
8月 | マガジンショツプ(11店)オープン | |
9月 | サンチェーン牛乳・サンチェーンアイスのデザイン一新 | |
10月 | 本社を台東区上サンチェーンビルに移転 | |
新CIシステム導入開始 | ||
昭和58年(’83) | 1月 | 「サンチェーン・オリジナルバーガー」全国発売 |
4月 | 旭川進出 | |
12月 | 「ぱあと3プロジェクト」活動開始 | |
昭和59年(’84) | 1月 | ダイエーグループ「エクセレント・カンパニー賞」受賞 |
2月 | 全国オンラインシステム完成 | |
5月 | サンチェーン「フランチャイジー共済制度」発足 | |
9月 | 「サンチェーンほっとパイ」発売 | |
昭和60年(’85) | 4月 | ニューメディア実験店「三鷹仲通り店」オープン |
7月 | 「ハッピーワーキング・キーワード」発表 | |
8月 | 土曜日本社カジュアルデ―開始 | |
10月 | ローソンとの全国日配品共同配送開始 | |
12月 | 地区長・SVハワイ研修開始 | |
昭和61年(’86) | 「新フランチャイズシステム」スタート | |
4月 | ガソリンスタンド併設「CVSS1号店」オープン | |
5月 | オリジナルサラダ新発売 | |
6月 | 「ぱあと3プロジェクト導入実験開始 | |
9月 | 「サンチェーン放送局」開局 | |
「ダイエーグループ賞」受賞 | ||
10月 | ローソンとの地域調整で北海道・東北・新潟・九州の | |
200店舗を移管 | ||
11月 | 10周年記念社員総会開催(中内CEO講演) | |
第1回「SMBグランプリ」開催・各賞決定 | ||
(サンチェーン・ミュージック・バトルロイヤル) | ||
昭和62年(’87) | 3月 | 女子社員R&D研究会発足 |
フランチャイズチェーンショーに初出展 | ||
7月 | 「サンチェーン・おにぎりサンド」新発売 | |
9月 | 第1回フレンドリーセミナー開催 | |
10月 | 第2回「SMBグランプリ」開催・各賞決定 | |
11月 | 水戸進出 | |
昭和63年(’88) | 2月 | 静岡進出 |
「サンチェーンSV社長塾」スタート | ||
5月 | 「カウンター委員会」・「米飯委員会」発足 | |
6月 | サンチェーン労働組合結成 | |
6月 | D・CVS・コンピューターシステム稼動開始 | |
9月 | POSシステム導入開始 | |
10月 | 第3回「SMBグランプリ」開催、各賞決定 | |
11月 | サンチェーンミュージカル「SESSUE」開催 | |
第1回「サンチェーン・キャンパスサミット」開催 | ||
12月 | 1000店舗達成 | |
平成元年(’89) | 1月 | ダイエーグループ「ゴールド褒賞」受賞 |
サンチェーン・ローソン対等合併し、平成元年3月に | ||
「(株)ダイエー・コンビニエンスシステムズ」として新発足すると発表 |
以上は、創業以来13年に及ぶサンチェーンの主な動きを、抜き出してみたものである。
詳しくは、是非、「バックナンバー」で確認して頂けると有難いと思う。
残念ながら、記録や記憶から洩れていることもあるし、あえて意識的に書かなかった裏話なども幾つかは、まだ残っている。それらのことは、また機会を得て補足したいと考えている。
「終わりに」
サンチェーンの創業と企業建設の歴史に関わって頂いた社員、店舗従業員、
加盟店の皆さん、お育て頂いたお取引先の方々、そして何よりも、未だにサンチェーンを、懐かしく思い出してくださる方々も多い全国のお客様に、心から感謝申しあげます。
長い間ご愛読有り難うございました。
何卒、サンチェーンをルーツとする現在の『ローソン』を、宜しくお願い申し上げます。
次号から、<コンビ二創業戦記・別伝>『DCVS(ダイエー・コンビニエンスシステムズ)回想録』を掲載いたします。
(バツクナンバーは「鈴木貞夫プロフィール及び目次と索引」を検索)