第434話 美味しいものを食べることは文化です。
2017/08/10
国は、生活文化(茶道、華道、書道、食文化その他の生活に係る文化をいう。)の振興を図るとともに、国民娯楽(囲碁、将棋その他の国民娯楽をいう。)並びに出版物及びレコード等の普及を図るため、これらに関する活動への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。【文化芸術基本法 第十二条】
平成25年12月、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された。
その後、ほんとうかどうかわからないが、関係者から漏れ聞いた話によると、「日本は、食を文化の一つとして位置付けてないのに、われわれ(外国)が和食を文化として認めて上げるのですか」とちょっぴり冗談を言われたという。
食を文化としていないと、具体的にはどういう影響があるかといえば、たとえば叙勲がある。
政治家、役人、公的機関を務め上げた人とか、芸術家たちは勲章をもらう機会が多いことはご承知だろうが、それが料理人にはめったにない。
「勲章なんかどうでもいい」と思ったりするのは、その人の勝手であるが、ただ業種としては、それだけ評価が軽くなるということであり、和食の料理人や蕎麦職人は、その他諸々の庶民的階級に留まらざるをえないということになる。
それ故に、駒込の蕎麦店「小松庵」の社長は「勤務する蕎麦職人でも一流シェフなみの生活レベルにしなければならない」と力説されている。
だから私も、「蕎麦談義」の第432話で「いつまでも、蕎麦は庶民のものなんてうそぶいていて、いいのですか?」という疑義を呈したわけであるが、外国から指摘されることに弱い国民性も手伝ってか、ここで「文化芸術基本法」の改正の陳情がわきおこったのは、いいことだと思う。
そんなわけで、〔一社〕和食文化国民会議に加入している〔特定〕江戸ソバリエ協会も、関係者とともに法改正の陳情集会に二度ほど参加した。
その効あってか、平成29年6月、「文化芸術基本法」の一部が改正され、生活文化の例示に「食文化」が追加され、食文化が文化芸術の領域に加わった次第である。
その後、〔一社〕和食文化国民会議は、同会議が考える「和食の心とかたち」を発表、また『ぐるなび』が作成し、〔一社〕全日本・食学会が推奨する「美味しいものを食べることが、文化活動になりました。」というポスターも現れた。
折しも、当協会は明日6日から第14回江戸ソバリエ認定講座を開講する。
そこで当会は、「和食の心とかたち」を皆さんに配布し、「美味しいもの・・・」のポスターを会場に貼り出すことにした。
ご承知のように、日本の蕎麦は、室町時代に和食と共に登場し、江戸時代中期に完成するや「江戸名物」とか「江戸を盛美とする」などといわれるほどになった。それが《江戸蕎麦》である。
また、【江戸ソバリエ】の目指すもののひとつに美味しい物を作るためには美味しい物を食べて六官を磨こうというのがある。それが「舌学」学習である。
先述の「和食の心とかたち」とポスターには、当協会の考えが表現されていて、嬉しい。
今夏、江戸ソバリエ認定講座を受講される皆さまにも、ぜひご理解いただきたいと願っている。
《参考》
平成20年度 江戸ソバリエ・シンポジウム 「六官で味わう 江戸ソバリエ」
〔文・写真(江戸ソバリエ協会の旗) ☆ 江戸ソバリエ協会 理事長 ほしひかる〕