第471話 蕎 麦 楽 曲
「Sobalier ゆさライブ」から
先の『蕎麦談義』の「粋の研究」で、「カワイイ文化」のことを述べたら、「カワイイをふくめた文化論はほしさんらしいけれど、きゃりーぱみゅぱみゅには驚いた」と言われた。
自分でも可笑しいと思っているが、幡随院長兵衛のことを考えていたら、彼女に辿り着いてしまった。
というのも、常々私は時代を動かす力には二つがあると考えていた。
一つは、たとえば、小室哲哉やつんくや秋元康ら各氏のすぐれたプロデュースによって女の子時代が創られるということ。もう一つは、幡随院長兵衛や裕次郎やきゃりーさんたちのように、彼(彼女)らの天性的な個性が時代とマッチし、これがまた新時代を作っていくということである。
そんな文化の流れが頭を過っているとき、長いお付合いをさせていただいている巣鴨の蕎麦店「栃の木や」さんから、「何かイベントをやりたい」とのご相談を受けた。ただお客さまを待っているだけではダメだというわけである。
感心しながら「じゃあ」と思ったとき、頭に浮かんだのが江戸ソバリエのゆささんだった。
江戸ソバリエ認定講座で提出されたゆささんのレポートを思い出したからであった。彼女のレポートは音楽と蕎麦打ちを楽しんでいる様子が感じられたし、また何とか両方を融合させようとする姿勢も伺えた。
それに、ご本人の態度にもそれが小気味いいように表れていて、好感のもてる女性だった。
さっそく、ゆささんを「栃の木や」さんにご紹介し、「Edo Sobalier ゆさライブ」の実現となった。
「栃の木や」さんのお蕎麦はは、名人の集まりである「鵜の会」や更科蕎麦打ちの名人「蕎遊庵」の流れを組むだけあって美味しかった。
一、ウエルカムドリンク(グラス生ビールorウーロン茶)
一、柚子切
一、先付(板わさ・鰹の酒盗・玉子焼)
一、牡蠣南蛮(北海道幌加内産)
一、天麩羅三種(ピーマン・南瓜・海老)
一、粗挽き蕎麦(北海道摩周湖産手挽き)
なかでも《牡蠣南蛮》は、今日のような寒い夜にはぴったりだ。
ところで、これまでゆささんの音楽は聞いたことがなかった。でも、直感的にうまくいくと思っていたが、予想通りだった。今風のカワイイさをもったエンターテイメント性がその仕草にもあったため、楽しいライブをつくってくれた。
「SOBA」という楽曲は楽しさいっぱいであった。この「栃の木や」は巣鴨地蔵通り商店街にあるから、この曲をスピーカーで外に流してみたら、道行く人に関心をもってもらえるかもしれない、と思うほど楽しい曲であった。
でもうまくいったのは、ユニットを組んでいるじょごごさんのバックアップが大きいからだろう。彼が作った「gensoba」、「Alegrias」は力強くて、幻想的だった。このような曲で、ゆささんのカワイイをサンドイッチのようにしっかり包みこんでいけば、これからも期待がもてる。
美味しいお蕎麦と楽しい音楽は、幸せへの切符みたいなものだ。皆さんも喜んでいただけたようだから、また企画できたらと思った。
〔文 ☆ 江戸ソバリエ認定委員長 ほしひかる〕