第495話 御食国の蔵囲昆布
2018/07/03
今日は、永平寺御用達の「奥井海生堂」を見学した。
まず、昆布出汁の試飲である。
小さなガラス・コップが三個置いてあって、中には「蔵囲利尻昆布」「羅臼昆布」「日高昆布」の三種の出汁が入っている。淡い薄緑色の液体が黄金のように輝いている。一口含むと、「美味しい♪」そして、三種の違いも明らかである。
むろん鰹出汁も美味しいが、昆布出汁は色んな味が調和したような深みを感じた。
とくに、「蔵囲利尻昆布」が香りも味も深かった。礼文島の香深村で採れた昆布だそうだ。
‘海辺のカフカ’の蔵囲・・・!! そんなわけで「蔵囲昆布」を保管する蔵の中を見せてもらったが、その中に昨夜「開花亭」で味わった「蔵囲昆布7年物」があった。
実は、この「蔵囲昆布」というのは、北前船の時代からの敦賀地方の独自産物であり、当老舗の逸品でもあった。それは北海道から昆布が敦賀に到着するのが雪の季節だったところから、都へ運ぶ手段がないため、春まで鰊蔵に保存したらしい。
これがよかった。蔵で一冬休ませたことで、新昆布の磯臭さ、ぬめりが脱けて、昆布の旨味がより引き出されることになったというわけである。
鰹節の本枯節と同じ理屈で、蔵囲昆布と本枯節が和食の旨味の素であるといえる。
それから、永平寺で頂いた【組子昆布】もあった。これは、江戸時代までは永平寺の僧が作っていたらしい。だが現在は奥井海生堂が、昆布に鋏を入れ、結び、編んで、納めているという。
北前船の越前・・・、この昆布ロードに在る永平寺・・・。
【淡⇒旨】は生まれるべくして生まれてきように思う。
〔文・写真 ☆ 江戸ソバリエ協会 ほしひかる〕